マイボス・マイヒーロー最終話

日本テレビ系。土曜ドラママイ★ボス マイ★ヒーロー」。
脚本:大森美香。原案:「頭師父一體」。音楽:高見優。主題歌:TOKIO「宙船(そらふね)」(ユニバーサル・ミュージック)[作詞&作曲:中島みゆき]。企画協力:明石竜二(ミレニアム・ピクチャーズ)。制作協力:トータルメディアコミュニケーション[TMC]。協力プロデューサー:小泉守&下山潤(TMC)。プロデューサー:河野英裕山本由緒日本テレビ)&山内章弘&佐藤毅(東宝)。企画:東宝。演出:佐藤東弥。第十話=最終回。
榊真喜男(長瀬智也)を退学処分にしたセント・アグネス学園は、今年の3年生の卒業式の日の午後、卒業できなかった彼が走って構内に入ってくるのを、止めるどころか、校長の南孝之(岩城滉一)以下の教員や生徒、さらには学食のあのアグネス・プリンの店のような委託業者まで含めた全校の皆で挙って大いに歓呼して迎え入れた。何故か。何故なら榊真喜男が、否、「マッキー」がヤクザ相手の暴力沙汰で留置所に入らなければならなかったのは学校を守るためだったのだし、何より彼は、受験勉強のための冷めた場と化していた学校の学級に「青春」の熱気を取り戻した「ヒーロー」だったのだからだ。学園は学園の規則を守り、秩序を保たなければならないが、同時に、この世界にはそうした規則の秩序を超えた真理があり得る。セント・アグネス学園はその聖なる名に相応しく動いたのだ。
今宵の最終回は三十分延長して一時間半もの特別番組だったが、重く寂しい冒頭から賑やかな中盤を経て幸福な結末に至るまで、盛り沢山に疾走した。見所は多かったが、暗から明への転換点を作ったのは前半の、留置所の面会室における「鉄仮面」先生こと南百合子(香椎由宇)と榊真喜男との対話の場だった。ヘレン・ケラーに「ウォーター」を教えたサリヴァン先生ではないが、鉄仮面先生は実に手のかかる生徒だった榊真喜男を相手に根気強く指導し続けた。榊真喜男は感謝した。しかし第五話で既に語られた通り鉄仮面先生も感謝していた。学園によって「マッキー」は変化し「マッキー」によって学園も変化した。成長は一方通行では終わらないのだ。
結局、セント・アグネス学園を卒業できなかった榊真喜男は、鉄仮面先生と3年A組の皆から贈られた「組」の学級委員の「卒業証書」を抱き、晴れて三代目組長に就任することに決したところで敢えてそれを延期して春四月、今度は「私立宙船高等学校」の一年生として入学した。なるほど納得の結末だ。生まれながらのヤクザである彼がヤクザであることを止めることはあり得ないが、普通の高校生として生きることの幸福を知った彼が今まで通りのヤクザ道に直ぐに戻れるとも思えない。何より彼はもはや、高校を卒業しなければ組長を継がせないという父との約束、父の思いをあっさり捨て去れるような男ではなくなっている。
その意味で傑作だったのは、留置所から出て間もなく、夜の街で熊田組の連中と遭遇した彼が「負け犬の遠吠え」という言葉の意味について解説しながら撃退した場面。
ところで。セント・アグネス学園3年A組を卒業した皆のその後の姿が描かれたのも面白かった。大学受験に失敗して、予備校でも相変わらず親分子分の関係を続けていた星野陸生(若葉竜也)&伊吹和馬(佐藤貴広)&宝田輝久(伊藤公俊)の三人組は微笑ましかった。受験勉強に励んでいた彼ら三人組の前を通り過ぎた男女は、肝試し大会の夜から交際を続けてきた早坂雅人(西野成人)と三田真琴(澁谷麻美)。仲良く密着しながら歩き去った二人の颯爽とした姿に嫉妬して星野陸生は傷付き落ち込み、伊吹和馬は二人に向けて「星野君はな、デリケートなんだぞ!」と叫んだ。衝撃的だったのは「キモロンゲ」こと諏訪部祐樹(広田雅裕)と美形の平塚隆介(武田航平)と坊主頭で太めの瀬川保(田中泰宏)の三人組が、大学では何故かトリオ漫才を始めていたことだ。しかも三人とも変な格好で。牧信一(足立理)は学食でアルバイト。ラーメンの中に思い切り指を浸けていて怒られていた。
[主要な登場人物&出演者]●榊真喜男(長瀬智也TOKIO])●桜小路順(手越祐也[NEWS])●真鍋和弥(田中聖KAT-TUN])●梅村ひかり(新垣結衣)●萩原早紀(村川絵梨)●南百合子(香椎由宇)●[私立セント・アグネス学園3年A組]宝田輝久(伊藤公俊)・牧信一(足立理D-BOYS])・伊吹和馬(佐藤貴広)・早坂雅人(西野成人)・安原正(森廉)・諏訪部祐樹(広田雅裕)・平塚隆介(武田航平)・瀬川保(田中泰宏)・星野陸生(若葉竜也)・フェイ・リン(チェン・チュー)・小澤香織(垣内彩未)・早乙女唯(相馬有紀実)他●南孝之(岩城滉一)●榊美喜男(黄川田将也)●水島椿(もたいまさこ)●黒井照之(大杉漣)●榊喜一(市村正親)。