さかなクン魚芸術論

本日の昼一時から三時にかけて松山城三之丸の堀之内公園にある愛媛県美術館では現在開催中の「魚のすがた展」に関連する事業として、国立大学法人東京海洋大学客員助教さかなクンを講師に迎えてのギャラリートークが挙行された。これは実に有意義な事業だった。優れた美術家たちは皆、魚類一つを描くにも対象の細部まで注意深く観察して、その美しく愛らしい形態を的確に把握し表現するものなのだという真理を、解り易くも詳しく、しかも楽しく説き明かしてくれたのだ。例えば、古茂田公雄の水墨画「タコ図」一幅は一見したところ酒席での戯画としか思えなかったが、さかなクンによると一瞥しただけで性別を判別できる程、タコの雄の脚、吸盤、眼の形態上の特徴を驚くべく的確に捉えて描き出しているのだそうだ。筆勢に任せて遊んで描いただけのように見えても、実は対象への温かな眼差しや、殆ど科学的なまでの鋭い観察による本質的な把握に裏付けられていたのだ。こうした真理の解明は並の美術史学の専門家には到底真似できないことで、それだけでも有意義だったが、しかもそのような学術的な解説を、子どもたちをも惹き付ける賑やかなパフォーマンスで繰り広げてくれたのが実に素晴らしかった。