渡る世間は鬼ばかり第三十三話

TBS系。「橋田寿賀子ドラマ渡る世間は鬼ばかり」。作:橋田寿賀子。音楽:羽田健太郎。ナレーション:石坂浩二。プロデューサー:石井ふく子。演出:山崎恆成。第八部第三十三回。
野々下長太(大和田獏)は、人生の重大な選択について当事者や周囲の意思や諸条件を冷静に考量することがなく、勢いだけで勝手に意を決してしまいがちだ。しかし決意のあとその実現のために疾走してしまえるのであれば潔いのだが、残念ながら野々下長太はそんなに潔くはない。重大な決意を翌朝には撤回してしまう。何と罪深いことだろうか。
小島久子(沢田雅美)は、山下健治(岸田敏志)が山下光子(奥貫薫)を追放して自分と復縁してくれるだろうことを確信している。その満々の自信の根拠は金のこと以外にも何かあるのだろうか。
神林常子(京唄子)の今までの人生は、ただ只管、子ども二人のために家を守り、家の病院を守ってその挙句、子ども二人には裏切られ見放されただけの歳月だった。それが今や逆転した。病院を処分して家族を解散し、神林清明愛川欽也)との愛に生きることにしたのだ。本間由紀(小林綾子)の誘いには決して乗らない。この愚かな実の娘の魂胆が母を家政婦として利用することにあるのは見え透いているが、誘いに乗らない理由はそれだけではない。なにしろ本間英作(植草克秀)の嫁の長子はん(藤田朋子)の優しさには感謝しつつも、その好意にさえも甘えはしない。常子は、母の愛を無にしたばかりか母をも捨てようとした英作と由紀を、二人ともに捨てたのだ。