土曜ドラマたったひとつの恋最終話

日本テレビ系。土曜ドラマたったひとつの恋」。第十話=最終回。
脚本:北川悦吏子。音楽:池頼広。主題歌:KAT-TUN「僕らの街で」[作詞&作曲:小田和正]。制作協力:三城。プロデューサー:西憲彦&渡邉浩仁。演出:岩本仁志
斉藤英二(池内博之)は薩摩出身。ナオ(綾瀬はるか)との会話の中でナオと自身との関係の現状について明晰に語る内に次第に薩摩の言葉に化していた。まるで西郷どんの如し。そこが面白かった。今度NHK辺で幕末明治維新を描く時代劇を制作する機会あれば、英雄=西郷隆盛の役には是非とも池内博之を起用して欲しいと思ってしまった。
ヒロト亀梨和也)の就職した造船工場。その現場で危うく大惨事を惹き起こしそうになってヒロトに助けられた若い作業員。演じていた若葉竜也は、一年前の土曜ドラマ野ブタ。をプロデュース」で隅田川高等学校2年B組の「シッタカ」こと植木誠を演じ、今夏の土曜ドラママイ★ボス マイ★ヒーロー」ではセント・アグネス学園3年A組の「不良」星野陸生を演じていた。
さて、最終回を迎えた今、このドラマにもともと設定されていたナオとレン(斎藤隆成)の病の意味について考えなければならない。何故なら今宵の最終回において二人の病の設定は何一つ役割を果たしていなかったからだ。とはいえ最終回において無意味だった設定も以前の展開においては無意味だったわけではない。(一)ナオとヒロトの間を近付け、深める上で、病弱なレンの果たした役割は絶大だったからだ。ナオとレンが病という共通点を持ったことで心を通わせたことがナオとヒロトの恋を導いたのは確かだ。また(二)レンが養護学校に通っているのと同じくナオも養護学校を卒業していたという事実は、野球選手に憧れていたレンへの力強い激励となってヒロトの人生の路線変更にも影響を与えたばかりか、何よりもナオ自身の進路の決定に大きく作用した。大富豪の箱入娘として大切に育てられていたナオは、養護学校教諭に採用されて北海道へ赴任し、家から独立することを決意したのだ。さらに加えるに(三)神崎亜紀子(余貴美子)を脅迫紛いの行動に走らせた原因として病弱なレンの母としての苦労を挙げることをも可能にした。レンがどこまでも母を愛し続けていたのは、母の苦労を知っていたからであると解することもできる。レンの進学を機にヒロトが家の工場を閉め、別の工場に就職したのと同時に亜紀子も心を入れ換えて水商売から足を洗い得たのは、最大の心配事がなくなったからであると解することができる。月丘みつこ(田中好子)が亜紀子を許すことができた理由が、病弱な子の母としての苦悩を共有していたことにあるのは劇中に語られた通り。しかし(四)ナオの病という設定がナオとヒロトの恋を妨げる要因の一つとしても機能したことは見逃せない。このドラマを解説する雑誌等の記事においてナオとヒロトの間の「たったひとつの恋」への障害は「身分の差」にあると一般に語られてきたが、実際に描かれたのは「身分の差」ではなく貧富の差であり、しかも貧富の差よりは病の問題の方が重要だったのではないかと思われる。だが、そうであれば両家には病という共通点こそあれ根本的には大した差なんかなかったのだ。
登場人物(出演者):ヒロト=神崎弘人20歳(亀梨和也KAT-TUN])/ナオ=月丘菜緒20歳(綾瀬はるか)/コウ=草野甲20歳(田中聖KAT-TUN])/アユタ=大沢亜裕太20歳(平岡祐太)/ユウコ=本宮裕子20歳(戸田恵梨香)//神崎造船鉄工所修理工=棚田(田口浩正)同修理工(浜田晃)同経理(大島蓉子)レン=神崎廉10歳(斎藤隆成)//工場長(平泉成)/斉藤英二(池内博之[友情出演])/月丘達也25歳(要潤)//月丘みつこ48歳(田中好子[特別出演])/月丘雅彦55歳(財津和夫)/神崎亜紀子48歳(余貴美子)。