ハケンの品格第三話

日本テレビ系。水曜ドラマ「ハケンの品格」。第三話。
脚本:中園ミホ。音楽:菅野祐悟。主題歌:中島美嘉「見えない星」(作詞作曲:長瀬弘樹&編曲:羽毛田丈史ソニー・ミュージック アソシエイテッドレコーズ)。プロデューサー:櫨山裕子&内山雅博。演出:南雲聖一。制作協力:オフィスクレッシェンド
東海林武(大泉洋)は「会社は家族のようであるべきだ」と信じている。しかし家族のような会社とはどのような状態を云うのだろうか。例えば会社の信用を傷付けるような失態をした社員に対しても、一応は厳しく叱りつつも結局は温かく協力的に接してゆくのが正しいのだろうか。実のところ彼はそれを期待していたようだが、それが通用するのは文字通り家族のように小規模な会社だけだろう。組織の規模が大きくなれば意思の統一も困難になるから命令の系統を明確化する必要が出てくる。しかるに支配と被支配の関係の明確化した中では、上司の強い決定が部下たちの間にある少数意見(もしくは沈黙の多数意見)を抑圧する事態が常に発生し得る。そういうのは「家族的」だろうか。強いて云えば「大家族」には近いのかもしれないが、恐らく一般に「家族的」と云われるものとは相違しているに相違ない。しかし家族的であることを願望する者は、家族的ではあり得ない組織をも、あたかも家族的に営んでいるかのように勘違いしかねない。東海林武のように。彼は自らの部下たちが自らの意志の下に「家族的」に統一されていると信じていたが、実際には、上司の暴走を冷ややかに見ながら単に業務命令に従っているだけの者も少なくなかったのだ。このように抑圧の要素をも含有せざるを得ないのが大組織というものの常であり、そこにおいて仮に中間管理職が組織の「意思」として断行しつつあった業務が致命的な形で頓挫するに至った場合、それまで封殺されていた別の意見を抱く部下たちが一斉に反乱を起こす恐れも決してないとは云えない。今回、東海林武を見舞ったのがそうした事態だったと云えるだろう。「マグロ解体ショー」開催を強引に決めた彼に対し部下たちは内心では冷ややかだったのだ。組織の「家族的」な性格が失われたのは、本質的には、正社員がリストラされて派遣社員が増加したからではない。そうではなくて、そもそも会社はそれ自体「家族的」ではあり得ないのだ。
登場人物(出演者):スーパー派遣社員=大前春子(篠原涼子)。派遣社員=森美雪23歳(加藤あい)/食品会社S&F営業部マーケティング課主任=里中賢介30歳(小泉孝太郎)/S&F営業部販売二課主任=東海林武32歳(大泉洋)。S&F営業部マーケティング課(新入社員)=浅野務23歳(勝地涼)/S&F営業部販売二課=黒岩匡子30歳(板谷由夏)/人材派遣会社「ハケンライフ」マネージャー=一ツ木慎也30歳(安田顕)/タブラオ「カンタンテ」フラメンコギタリスト=天谷リュート20歳(城田優D-BOYS])/近耕作30歳(上地雄輔)島田香(入山法子)竹井瞳(清水由紀)。ナレーション(田口トモロヲ)。S&F営業部マーケティング課嘱託社員=小笠原繁62歳(小松政夫)。タブラオ「カンタンテ」ママ=天谷眉子58歳(白川由美)。S&F営業部長=霧島敏郎60歳(松方弘樹)。