受験の神様第一話

新番組。
日本テレビ系。土曜ドラマ「受験の神様」。
脚本:福間正浩。音楽:池頼広。主題歌:TOKIO「本日、未熟者」[作詞&作曲:中島みゆき]。プロデューサー:西憲彦(日本テレビ)&鈴木聡(ケイファクトリー)&渡邉浩仁(日テレアックスオン)。製作協力:日テレアックスオン。演出:岩本仁志。第一話。
区立駒町小学校六年生の梅沢広(長島弘宜)は、早田中学校野球部のハンカチ王子風キャプテンに憧れ、所謂「中学受験」を考え、試しに予備校「日習研」の全国一斉模擬試験を受験したが、全く理解できない問題文を読んで衝撃を受けて躓き、悲惨な結果に終わった。しかし彼がそれで中学受験を諦めるどころか、むしろ真剣に考えるようになったのは、最も根本的には、その難問が同級生の友人に云わせれば受験勉強では馴染みの初歩的な問題であると知ったからだった。始める前から諦めたくはなかったから、強い相手を前にして逃亡したくはなかったからだった。梅沢勇(山口達也TOKIO])が自身の子のそうした思いを全く理解しなかったのは不自然ではないばかりか自然なことだ。なにしろ彼は妻と離婚して以来五年間、子と仲のよい良き父親として生きてきて、そのことに誇りを抱いてきて、子のことを全て理解しているつもりだったのだ。既に理解しているのであれば、もはや理解すべきことはないだろう。良き父親としての彼の姿勢は、職場においても良き上司という形で貫かれているようだ。彼の勘違いな言動の数々は褒められるものではないが、多分、彼の人柄をよく知る人々にとっては自然なことだったろう。
しかし彼が、本来あり得ない位の看過し得ない勘違いをしていたことも確かなのだ。彼の子の広が早田中学校へ入りたいと云い出したのは野球の強豪校に憧れるからだと解した彼は、函館にある中学校へ入学させようとした。野球の強豪校ならどこでもよいと勝手に思い込み、受験の難関を避けて、多額の入学金と授業料と寄付金さえ払えば誰でも入れる学校へ入れようとしたのだ。この発想自体は彼の「良き父親」としての姿勢の明るさと馬鹿さ加減を物語るが、問題なのは、これが野球少年の進路として到底あり得ない道であることに彼が全く気付いていないことだ。ラグビー選手として有名大学へ推薦入学を果たし、一流商社へも体育会系の人脈で就職し得た彼なら、己の経歴に照らしてそのことに直ぐ気付いて然るべきだ。野球少年として野球の強豪校に憧れるのであれば採るべき受験勉強は、試験勉強ではなくて野球の練習だろう。だが、梅沢広少年は野球の練習ではなくて試験勉強をしたいと云っているのだ。その時点で広が、野球の強豪校に憧れているのではなく早田中学校に憧れているのであることが明白だ。端的に云えば、彼は野球選手としての王子様風キャプテンに憧れているのではなく、優等生としての王子様風キャプテンに憧れているのだ。
受験の神様と云われる中学生、菅原道子(成海璃子)が弓道場で梅沢勇へ向けて矢を射るとき雷鳴が轟いたのは天神=菅公に因んでいるだろう。医師の子の西園寺義嗣と忠嗣の兄弟を演じるのは森本龍太郎[ジャニーズJr.]と森本慎太郎[ジャニーズJr.]の兄弟か。