山田太郎ものがたり第七話

TBS金曜ドラマ山田太郎ものがたり」第七話。川嶋龍太郎演出。
山田太郎二宮和也)への池上隆子(多部未華子)の片想いを応援すべく中井正美(大塚ちひろ)の発案した夏休み最後の日の勉強会。寺へ泊まり込んでの合宿。そこへ勝手に押しかけてきた杉浦圭一(忍成修吾)は、勉強の間も常に山田のことが気になり、見詰めてばかりだった。気になって見詰めた挙句、勉強で解らない箇所について優等生の山田に質問し、手取り足取り教えてもらうことで身体を密着させる程の接近を試みたり。第五話で山田に抱き締められて以来、なぜか山田のことが頭から離れなかったのを自身でも不思議に思っていた杉浦圭一は、中井正美の何気ない言にあった「恋」の一語を耳にした瞬間、この己の思いがまさしく「恋」そのものであることを、明確に自覚するに至った。自覚した途端、山田を見詰める彼の眼は本格的に「恋する人」の眼と化した。それに気付いて中井正美が悲鳴を上げたのは、杉浦圭一に想われるのは己に他ならないと勝手に思い込んでいたからだろう。
女が男の熱い視線を感じたとき、女はその欲望の眼の対象は己であると思いがちだが、実はその視線は女を超えてその奥の男子に向けられているのかもしれないのだ…というのは昔どこかで誰かの語った印象的な例え話だ。しかし人は大概、その可能性に気付かない。或いは信じない。だから真相を知るや衝撃を受ける。このドラマで今まで積み上げられてきた杉浦圭一と中井正美との間の親密な関係性が、もし今宵の中井正美のあの悲鳴のためだけの挿話に過ぎなかったのであるとすれば、なかなか緻密な伏線だったと評して可だろう。
ところで、杉浦圭一(というよりは演じている忍成修吾)の服装と身体のバランスが一寸よかった。全体として細く見える身体の印象に反して思いのほか太い腕が、今時の細身で派手なシャツの半袖から窮屈そうに覗いている感じが夏の熱気と調和してエロティクに見えた。