斉藤さん第十話

日本テレビ系。水曜ドラマ「斉藤さん」
原作:小田ゆうあ『斉藤さん』。脚本:土田英生。音楽:池頼広。主題歌:観月ありさ「ENGAGED」。企画:東宝。第十話。演出:久保田充。
愚直なまでの正論の人、「斉藤さん」こと斉藤全子(観月ありさ)と、正論を云いたい思いを自ら抑制して敢えて妥協と調整を図る政治的知性の人、三上りつ子(高島礼子)。真に最も理解し合える君子の関係を、ここに見ないわけにはゆかない。両名が親密な関係にはならなかったのも君子同士だからこそと云えるかもしれないが、少々残念ではある。
ところで、ヲタク者流の批評言説の世界には「超展開」という術語があるようだが、思うに、今宵のこのドラマの後半の、「斉藤さん」市議会本会議において演説するのを許されるの場面など、まさしく超展開の実例になり得るのではないだろうか。とはいえ物語の終局を飾るに相応しい展開だったとは思う。いつでも正論を云う「斉藤さん」が、正論を通さない政治家たちの世界に乗り込んで敢えて正論の必要性を説く!というのは、確かに、このドラマの山場には相応しいに相違ない。
己の政治生命をここで絶たれてしまう位なら、むしろ思い切って市長や議長の不正を暴いてしまおうか…と密かに悩んでいた市議会議員の柳川(加藤雅也)は、ライヴァル「斉藤さん」の演説に挑発されて、激励され、奮起することを得た。しかも、そのとき本会議場の傍聴席には「斉藤さん」に招かれて来ていた彼の令息、柳川正義(山田親太朗)。柳川正義が不良化したのは父の不正に対する反発からだったようだが、今、父は子と市民の前で己の不正について謝罪しようとしていた。和解と更生の刻は遠くないだろう。