仮面ライダーキバ第八話

テレビ朝日系。「仮面ライダーキバ」。井上敏樹脚本。田恕W竜太演出。第八回「ソウル-ドラゴン城、怒る」。
紅音也(武田航平PureBOYS])は今週も絶好調。何者かに狙われるか?と思われて実は誰からも狙われてはいなかった珈琲マニア次狼(松田賢二)を、オトリにさえなれない「役に立たない奴」と断定し、次に狙われるかもしれない麻生ゆり(高橋優)を守り得るのは己であると立候補。「荒波に立つ防波堤のように役に立つ男」と自らを形容し、どれだけ役に立つ男であるかを「痒いところに手が届く」と説明していた。「素晴らしき青空の会」を「清々しき春風の会」と間違えていたが、それも実に楽しそうだった。
愛する麻生ゆりに会うため喫茶店「カフェ・マム・ダムール」に日々通う彼は実は大の珈琲嫌いで、珈琲に一家言である店主の木戸明(木下ほうか)と対立。しかし何者かに狙われているのが同店の珈琲を飲んだ者に限られる事実に気付いた音也は、麻生ゆりの身代わりになるべく、店主に大量の珈琲を淹れさせて一気飲みをした。見事な一気飲みに対し、店内の他の客たちは盛大な拍手喝采を浴びせ、彼自身も朗らかに高笑いをしていた。実に楽しそうだったが、直後、気分悪くなって倒れてしまった。
そして戦闘の場。次狼の自作自演の茶番を目撃して興味を抱いたのか、次狼と麻生ゆりに近付いてきたバッシャー(小越勇輝)からの攻撃を、麻生ゆりを庇って代わりに受けた音也。もちろん気絶した。しかし勇敢な行動であり、それを見れば麻生ゆりの見方も少しは変わったかもしれないが、生憎、何も見てはいなかったようだ。
同じ夜。音也は、どこかにいるはずの愛しの麻生ゆりに捧げるべく、洋館のバルコニーで情熱的にヴァイオリンを奏でながら、予感していた。麻生ゆりが「もうすぐ俺を愛するようになる」ことを。でも、そのとき別の場所では当の麻生ゆりが次狼に接近して抱き付いていたのだ。嗚呼、音也。言動の全てが裏目に出てしまう紅音也の陽気な惨めさからは眼が離せない。
他方、名護啓介(加藤慶祐PureBOYS])の生真面目さ加減の狂気は、麻生恵(柳沢なな)の云う「偽善」の域を遥かに超え、もはや、どうにも笑えない境地にまで達してしまった。制作者側としては今後どう扱うつもりだろうか。また、次狼が誰かに狙われているかと見せかけてその実は誰からも狙われてなんかいなかったのは、美少年バッシャーが気付いた通り、次狼自身が狙う側に他ならなかったからだが、さて、あのように幾人もの犠牲者を出した恐るべき化け物が二十二年後には仮面ライダーキバの配下と化して活動している状態というのは、なかなかに物騒で不安な話ではあり、名護啓介の警戒心には妥当性があったわけなのだ。