炎神戦隊ゴーオンジャー第六話

東映炎神戦隊ゴーオンジャー」。武上純希脚本。竹本昇監督。
第六話「乙女ノココロ」。
この番組を初めて見たのだが、日曜の朝に相応しい内容と作りだと思った。明るく楽しく元気の出る番組と云ってよい。味方も敵も陽気な人たちばかりだし、言動が一々笑える。番組の題名に「炎神(エンジン)」とあり「ゴーオン(轟音)」とある通り正義の味方は自動車によって表象されているが、対する敵の側も各種の機械によって表象され、科学技術の発達を背景にした公害問題を象徴しているようだ。ここには、科学技術によって生み出された害悪は、人間の側のさらなる成長、進歩によって乗り越えてゆかなければならないという極めて前向きな姿勢を読み取ってよいかもしれない。実に明るい。
基本的に「ギャグ百連発」みたいに最初から最後まで笑い所が満載のドラマだったのだが、中で最も傑作だったのは、音響機器の化け物スピーカーバンキが巨大怪獣化するとき「産業革命!」と叫んでいたところ。慌てて調べてみたところ、どうやら化け物が巨大化するときには毎回この声をかけているらしい。凄い。なるほど敵側の組織「蛮機族ガイアーク」(害悪!)は十九世紀の機械工業文明の負の側面の残滓なのか。なかなか深い。
しかし蛮機族ガイアークは、各種の環境の悪化による人間への悪影響、公害問題を惹き起こすことには熱心のようだが、産業革命時代の最大の問題である労使の関係については極めて良心的であるようだ。なにしろ、この組織を束ねる諸大臣は労働者である「蛮機獣」に対して優しく、失敗しても責めることなく労いの言葉を忘れない。
他方、正義の味方ゴーオンジャーの日常生活に起きたドラマも楽しかった。ゴーオンイエロー楼山早輝(逢沢りな)の「初恋」に、兄貴分のゴーオンレッド江角走輔(古原靖久)が狼狽しつつも泣く泣く認めてやろうとする話だったのだが、まるで一昔前の頑固親父みたいな言動が面白かった。
早輝の「恋」の相手は、国際的に活躍する天才フルート奏者の小川征爾(南圭介PureBOYS])。走輔は「フルート男」と呼んだが、世間では「フルート界のプリンス」と呼ばれているらしい。早輝と彼との「デート」の現場に駆け付けた走輔は、連れて来たゴーオンブラック石原軍平(海老澤健次)に、彼が「警察学校では常識」という読唇術で早輝とフルート王子の会話の内容を読み取らせようとしたが、この術が失敗して却って誤解を拡大し、走輔を暴走させてしまった。失敗した場面をよく見ると、フルート王子や早輝が下を向いたり横を見たりして口元が遠くからは見えにくくなったところで読唇に失敗していることが判る。
走輔の「幸せの女神は後ろハゲ」という例え話は、余りにも独創的で笑える。一度目の戦闘のときゴーオンブルー香坂連(片岡信和)が走輔のイビキ音をはじめとする日常の中の騒音について数値を上げて説明した上で、対策として耳栓を取り出したのも普通なら笑い所なのだろうが、それが有効だったのはもっと楽しい。ゴーオングリーン城範人(碓井将大)が軍平の読唇術を試験するため出した問題の答えは「ドキドキゆかい」で、それも微妙に面白かったのだが、それが変身のときの彼の決め台詞だったことを、後半の変身の場面を見て知った。似合っている。でも、そんな彼等にとって馴染みの言葉を出題されているのに直ぐには読めなかった軍平の読唇術というのは、やはり当てにならない代物だったのか。
フルート王子を演じた南圭介を目当てに今日この番組を初めて見たのだが、余りにも面白くて予想以上に楽しめてしまった。読唇を試みる走輔と軍平のコンビも傑作だったが、南圭介ブログ(http://ameblo.jp/minami-keisuke/)昨日付の記事を見ると、走輔役の古原靖久(「ゴーオンレッド役のヤス」)と軍平役の海老澤健次(「ブラック役のえびチャン」)と一緒に撮った写真が載る。