ハチワンダイバー第七話

フジテレビ系。土曜ドラマハチワンダイバー」。
原作:柴田ヨクサルハチワンダイバー」(集英社ヤングジャンプコミックス刊)。脚本:古家和尚。音楽:澤野弘之。将棋監修:鈴木大介八段。協力:社団法人日本将棋連盟。プロデュース:東康之。制作:フジテレビドラマ制作センター。演出:水田成英。第七話。
前半には主人公「ハチワン」こと菅田健太郎(溝端淳平)と、斬野シト(京本政樹)との再度の対局があり、後半には菅田の妹のこと、家族のこと、そして謎の組織「鬼将会」のことが描かれた。
前半の雪辱戦は、対局それ自体の「嵐」のような激しさは無論のこと、「アキバの受け師」中静そよ(仲里依紗)への菅田の愛の「告白」をめぐる興奮の騒動もあって、面白くて楽しめた。この対局の間を通じて、菅田は鼻血を出したままだった。開戦に先立ち、この対局に何を賭けるか?を決める段、菅田は己の勝った暁には受け師に告白することを明かしたが、丁度そこに受け師が入室し、図らずも告白は完了。そのことが菅田を苦悩させ追い詰め、将棋に集中できなくしてしまった。「ダメだ!」と叫んだ彼は、事態を打開させるべく「受け師さん、僕がさっき云ったこと、忘れてください」「忘れてください!」と告げたが、受け師は「はい。でも…簡単には、忘れられない」と答えた。このときだった。菅田が鼻血を出したのは。この反応によって混乱をますます深めた菅田に、受け師は「勝って」と命令して、「はい!」と応じて菅田は漸く立ち直った。この直後の菅田の一手を、斬野は「いきなり怖い局面にしたな」と評した。激闘は続いたが、斬野は強く、再び苦戦を強いられた菅田は、意を決して「受け師、好きだ!」「みるく、好きだ!」「中静そよ、好きだ!」「大好きだ!」と告白の三連発。呆れた斬野が「もう終わりだ」と止めを刺したかに見えた。このとき菅田は立ち上がり、受け師に改めて告白した。「将棋と肩を並べる位、あなたが好きです。でも、僕があなたを好きだってこと、それに対して返事はしないでください。僕が勝ち続けている間だけは、僕を嫌わないでください。それで、いいですか?」。受け師からの「それで、いいです」という返事を聞いて「それなら無敵だ」と云った菅田は、ついに「DIVE!!」。
完全な勝利を獲た菅田に、受け師は、アキバのメイド「みるく」の声で、「素敵でした。御主人様」と云って、菅田は再び鼻血を出した。
この激闘の間、斬野は常に静けさを保ち、威厳に満ちていたが、退場の際には自ら作成した等身大「受け師」人形を運び去る後姿も見せて、笑わせた。
他方、後半の話に関して注目すべきは、菅田の恩師、鈴木歩人(小日向文世)が、プロ棋士たちの盟主として、謎の組織「鬼将会」を殲滅すべき必要性を認識したらしい場面があったこと。このことは菅田の今後にも何らかの重要な影響を与えることが容易に予想されよう。
菅田の父親も「鬼将会」によって負傷させられ、死に追い込まれたらしいことが、菅田の妹、菅田歩美(大政絢)によって語られたことも重要だ。菅田健太郎は、少年時代にプロ棋士を目指して郷里を離れて以来、東京で一人暮らしを続けていて、その間も妹との交流はあったが、新進棋士奨励会を二十六歳の年齢制限によって退会せざるを得なくなって以降は、家族に合わせる顔もないと思い、家族との連絡も絶ち、家族のことを考えようとはしなかった。しかし今、妹と再会し、妹から家族のことを聞いて、そして何よりも受け師との出会いを契機に、己の夢のためだけではなく他を守るためにも「鬼将会」と戦うことを決意した。「僕は変わります。僕は、僕はもう逃げない」。
ところで。菅田健太郎の少年時代を演じる役者が愛らしい。演じるのはセントラル子供劇団の照井宙斗(てるいひろと)。NHK大河ドラマ功名が辻」における国松や、映画「COSMIC RESCUE」における千葉創平、「鉄人28号」における正太郎の幼少時代等を演じた役者とのこと。