ごくせん第十一話=最終回

日本テレビ系。開局55周年記念番組。土曜ドラマ「ごくせん」。
原作:森本梢子「ごくせん」。脚本:江頭美智留。音楽:大島ミチル。主題歌:Aqua Timez「虹」。プロデュース:加藤正俊。制作協力:日テレアックスオン。演出:佐藤東弥。第十一話=最終話。
今宵の最終話において最も印象深かった場面。退学と解雇か、御咎めなしか、赤銅学院3年D組の担任教諭「ヤンクミ」こと山口久美子(仲間由紀恵)と生徒たち皆が「処分」について理事会の判断の下されるのを静かに待っていた教室内に入ってきた理事長の赤城遼子(江波杏子)が、友情に基づく怒りの素晴らしさと同時に暴力の許し難さを説き、罪を悔い改めるべく「二週間の停学」を宣告したところだ。威厳に満ちた形姿、厳正な口調。しかし表情には成長しつつある眼前の不良少年たちに対する安堵感があった。
教頭の猿渡五郎(生瀬勝久)は、理事長の去ったあと、生徒たちに対し「理事長の寛大な措置に感謝しろ!」と云った。しかし理事長のこの決意は、実のところその直前の、体育館における保護者たちへの説明会の開始の時点で既に殆ど固まっていたと見るべきだろう。窃盗犯の逮捕に繋がった集団乱闘事件に関する報道を受けて学校に集まった怒りの保護者たち大勢を前にして謝罪していた理事長の口調は厳正で形式主義的ではあったものの、その発言内容には既に、生徒たちを何とかして守れないものかという思いが滲み出ていた。理事長がヤンクミに弁明の機会を与えたとき、恐らく理事長はヤンクミの「理想論」に期待したのだ。ヤンクミの演説を聴いていた理事長の顔は、半ばヤンクミの信念の程を試すような、しかし同時に、半ば期待しながら見守るような表情を見せていた。理事長はヤンクミに、己の教育の夢を実現してくれるかもしれない者を見出したのかもしれない。
それにしても、今宵の話の前半を盛り上げたのは夏休み直前の期末試験のこと、生徒たちの沖縄旅行のことだった。
3年D組の生徒たちは、高校生活三年間の最後の夏休み、全員で沖縄旅行にでもゆこう!と議していたが、猿渡教頭からは、期末試験で赤点を取った者は夏休み返上で補習授業を受けなければならないことを宣告された。3年D組の連中は全員が赤点を取る恐れ濃厚。また、補習授業は担任教諭の仕事と定められたので、そうなるとヤンクミも、この夏に計画していたハワイ旅行を断念しなければならなくなる。そこで3年D組の生徒たち、何としても一人も欠けることなく夏休みを満喫できるようにすべく、皆で猛勉強を始めた。この、何時もとは違う感じの展開が楽しかったのだが、結局どうなったのか。勉強に挫折した生徒たちと、ハワイ旅行を断念したヤンクミとがともに「一緒に補修をしよう」と語り合ったところがそのまま結末であるのか知らないが、今宵のドラマ前半を散々盛り上げた話である以上は、結末についてそれなりの描写が欲しかったところ。一つの解決策として、理事長が「二週間の停学」に加えて夏休み期間中の補習授業を命じるという展開もあり得たろう。
理事長とともに今宵の最終回における大きな見所を担ったのは、無論、3年D組一番のリーダー、風間廉(三浦春馬)。意識不明の重態から漸く目を覚ました彼が、傍にいて泣いていたヤンクミに、卒業証書をもらう夢を見ていたことを語り、卒業への意志を告げたあの場面。ヤンクミへの感謝の涙を流した彼の顔の美しかったこと。この役は、三浦春馬という人材を得たからこそ成り立り得たと云わざるを得ない。
生徒役筆頭の大役をこのように務め上げた三浦春馬は無論のこと、本城健吾役の石黒英雄や市村力哉役の中間淳太、倉木悟役の桐山照史、神谷俊輔役の三浦翔平のような主要生徒役のほか、原明大役の真山明大や松方広役の矢崎広、高橋公人役の戸谷公人、吉田竜也役の若葉竜也等このドラマにおけるわずかな出番に大いに奮闘した若手男子俳優たちの今後の活躍に大いに期待してゆこう。