炎神戦隊ゴーオンジャー第二十話

東映炎神戦隊ゴーオンジャー」。
第二十話「兄妹バトル」。香村純子&荒川稔久脚本。諸田敏監督。
今回の戦闘は、新たに合流した炎神ジャン・ボエールとゴーオンウイングスによって担われたが、その終結後、ゴーオンイエロー楼山早輝(逢沢りな)が「わたしたち出る幕なかったね」と云ったのを聴いて、ゴーオンレッド江角走輔(古原靖久)は「ええ?」と驚いていた。彼は自分たちゴーオンジャーに出る幕が全くなかったことに、意外にも気付いていなかったらしい。流石だ。
背後では、ゴーオンブルー香坂連(片岡信和)がゴーオングリーン城範人(碓井将大)の顔に付いた汚れを取ってやっていた。まるで母親。
蛮機族ガイアークは、今回の戦闘には何時も以上の気合を入れ、期待をしていた模様。なにしろ、害地副大臣ヒラメキメデス(声:中井和哉)の策略により、前回の戦闘で無惨に敗北した害地目の蛮機獣ノコギリバンキ(声:五代高之)をチェーンソーバンキに再利用し、また、炎神一派の行動様式(「どこでも打つ放すオバカさんたち」)について把握した上で、彼等を爆撃するためのエネルギーを最大限に創造し、彼等自身の力を利用することによって、彼等を自爆させようようとしたわけなのだ。実に遠回りな、凝った策略だ。ところが、対するゴーオンジャーとゴーオンウイングスは、ゴーオンゴールド須塔大翔(徳山秀典)の異性交遊の問題、性的な本性の問題に夢中だった。
その発端は、大翔の好色ドン・ジョヴァンニ疑惑について、ゴーオンジャー五人衆が証言してゴーオンシルバー須塔美羽(杉本有美)に教え、憤らせて兄妹バトルを勃発させたことにある。五人衆の内、走輔は、大翔の意外な本性を知って、面白がりながら美羽をからかっているだけと見受けられたのに対し、ゴーオンブラック石原軍平(海老澤健次)は大翔の疑惑をまるで稀代のワルの所業であるかのように怒り、批判しているように見えた。軍平の、厳格主義者の面目躍如と云えるだろう。
これに先立ち、「大翔さんがブロンドの美人とデートしてるとこ」を目撃した早輝は「わあ、凄いとこ見ちゃった!ウフ!」と楽しそうだったが、それで喜び勇んで居所のキャンピングカー「ギンジロー号」に帰宅したとき、その室内では他の四人が既に同じ話題で大いに論議し、盛り上がっていた。こんな話題であんなにも真剣に語り合えるなんて。
さて、私的に注目しておきたいのは、兄妹バトルの末に、兄を禁欲的なヒーローの道から解放してやりたいと考えるに至った美羽が、ゴーオンウイングスを解消しても一人で戦えるところを見せ付けるべく、チェーンソーバンキの前に既に勢揃いしていたゴーオンジャーの前に飛び込んで来たとき、「マッハで倒してやるんだから!」と言い放ったこと。「マッハ」と云うのはゴーオンレッド走輔の決め台詞であるから、当然、走輔は「コラ!美羽!それは俺の台詞だ」と文句を云った。そのあとにも「俺の台詞」と呟いていたから、かなり悔しかったのだろうが、それにしても、美羽が走輔の台詞を奪ったことは、六月十五日放送の第十八話を踏まえる限り、かなり意味深いものと思えてきてしまう。他の四人の台詞ではなく走輔の台詞を横取りしたのは、走輔がゴーオンジャーの中心人物、ゴーオンレッドだからだろう。だが、そもそも台詞を横取りすること自体が全く必要ないのだ。やはりこれは、美羽にとって最愛の兄に代わり得る男子が、兄とは正反対の走輔に他ならないということを、示していると見るべきではないだろうか。