炎神戦隊ゴーオンジャー第二十一話

東映炎神戦隊ゴーオンジャー」。
第二十一話「幼稚ナヤツラ」。武上純希脚本。鈴村展弘監督。
前回から新たに合流した炎神ジャン・ボエール(声:西村知道)は、ゴーオンウイングスを戦闘の専門家に育て上げた師だが、戦闘の専門家と云うには余りにも智略を欠いて幼稚でさえあるゴーオンジャー五人衆には興味を示し好意を抱いている模様。その理由は実に明快。正義のヒーローたるもの、時には考える前に行動すべき場面もある。蛮機族ガイアークの無差別テロによる被害者たちを救出したいという思いや、敵に捕らえられた友を救いたいという思いに駆られて、その思いだけで、身の危険をも顧みず、真直ぐに行動に走るゴーオンレッド江角走輔(古原靖久)をはじめゴーオンジャー五人衆の熱い厚い正義感を、ジャン・ボエールは愛するからなのだ。
ジャン・ボエール主催によるゴーオンジャー&ゴーオンウイングスの合同演習。過酷な訓練のあとには盛大なバーベキューの食事会。久し振りの肉に大喜びの走輔。しかし最も大ハシャギをしていたのはゴーオンブラック石原軍平(海老澤健次)とゴーオングリーン城範人(碓井将大)。彼等二名とともに食欲旺盛な三人組を構成するはずの走輔は、むしろゴーオンイエロー楼山早輝(逢沢りな)との会話に夢中の様子ではあったが、もちろん、その話題は手に持つ肉のことだったろう。注目すべきはゴーオンシルバー須塔美羽(杉本有美)も一緒に盛り上がっていたこと。とはいえ「こういうのを、人間らしい食事って云うのよ、キラキラでしょ?」という発言は、密かにゴーオンジャーの給食係ゴーオンブルー香坂連(片岡信和)を傷付けはしないか?と心配してしまったが、見れば連も一緒になって何時になく盛り上がっていた。やはり彼も肉食には飢えていたのだろうか…と考えると一寸泣ける。
しかるに彼にはそのあともう一つ、大喜びの局面があった。ジャン・ボエールがゴーオンジャー五人衆を対象に「マシンワールドの歴史について」「人間と炎神の交流システムについて」講義を始めたところ、他の四人が居眠りを始めた中で彼一人だけは目を輝かせて聴講し大いにメモを取っていたのだ。素晴らしく旺盛な知識欲。
これに先立ち、神出鬼没のジャン・ボエールがゴーオンジャー居所のキャンピングカー「ギンジロー号」に出現して彼等に講義をしたいと提案したとき、当の彼等は大いに落ち込んでいた。特に走輔は、蛮機獣との戦闘で自分たちゴーオンジャーが今回またしても手も脚も出せないままゴーオンウイングス等に救われてしまったことを悔しがっていた。悔しさの余り、バーベキュー会場に戻ることを拒否した程だった。軍平が折角の肉を食いに戻りたがっていたのを、敢えて却下したらしい。意地を通したのだ。生真面目ではあっても食欲には意外に素直な軍平と、旺盛な食欲を我慢してでも男の意地を通さないではいられない頑固親父のような走輔。面白い対比だ。
他方、蛮機族ガイアークの居城ヘルガイユ宮殿には異変あり。
先ずは前回の戦闘における害地目の失敗を受け、一同が流石に落ち込んでいたところ、今回は害気大臣キタネイダス(声:真殿光昭)が皆を励ますべく、風船の化け物、「フーセンの寅」ことフーセンバンキ(声:原一平)を出陣させた。「わたくし、生まれも育ちも害気目、人呼んでフーセンの寅と発します」という自己紹介に、害水大臣ケガレシア(及川奈央)は「どこが寅でおじゃる。ブタみたいな顔して」と意地悪な一言。彼等はああ見えて基本的に悪者なので、何でも取り敢えず悪口を云うのが基本なのだ。
頼りなさそうなフーセンバンキも、猛毒ガスの入った風船を子どもたち相手に配り歩いてそれらを爆発させるという恐ろしい攻撃で大活躍。しかもゴーオンジャーからの攻撃も全て風船の弾力によって跳ね返した。なかなか無敵の強さ。「見上げたもんだよ、屋根屋の褌、見下げたもんだよ、ゴーオンジャー」。しかるにゴーオンウイングス等の攻撃によって退却。宮殿に戻ったフーセンの寅に対し、キタネイダスは「おめおめ追い返されてきおって」と叱責したが、フーセンの寅は「サクラ、それをいっちゃ、おしまいだい」と反応し、「誰がサクラぞよ?」と叱られていた。
問題なのは、ここで害地副大臣ヒラメキメデス(声:中井和哉)が、フーセンバンキをもっと有効に活用する作戦があり得るのではないか?と呟いたのを、害地大臣ヨゴシュタイン(声:梁田清之)が聞き逃さなかったこと。ヨゴシュタインはヒラメキメデスに対し建策を命じると同時に、今度こそは失敗を許さないこと、もし今度も失敗するようでは生かしてはおけぬことを告げた。恐ろしい。何故こんなにも怒っているのか。単に度重なる失敗に怒ったというよりは、同僚であるキタネイダスやケガレシアに迷惑をこれ以上かけるわけにはゆかぬという判断があったのだろう。実際、ヒラメキメデスの策略を採用したにもかかわらず害地目のみか害水目や害気目の蛮機獣までも、何体も敗北してきたのだ。
永年の同僚であり盟友であるキタネイダスとケガレシアに迷惑をかけた上、両名の前で己も恥をかかされたと思っている様子のヨゴシュタイン。そこで知将ヒラメキメデスは、かつてジャン・ボエールの開発した傑作であり今やゴーオンジャーの頭脳であり仲間であるボンパー(声:中川亜紀子)を誘拐し破壊する策略に出た。「ゴーオンジャーの頭脳たるボンパーの生命も、風船の灯火…フフ、いや、風前の灯火」という駄洒落を云って自分で笑ってしまう程の余裕さえ見せていたヒラメキメデスだったが、ゴーオンジャーの熱い篤い友情と、ゴーオンウイングスの戦闘力の前に、今回の作戦も失敗。フーセンバンキは敗北、ヒラメキメデスも敗走した。これに対するヨゴシュタインの怒りの程は予想以上だった。あんなにも腹心を信頼していた彼が、こんなにも怒るとは。普段は生意気なヒラメキメデスに対して辛辣なことばかり云い放つケガレシアもキタネイダスも、流石に驚いて気の毒がっていた。
でも、そんな彼等も八月九日公開の映画「炎神戦隊ゴーオンジャーBUNBUN!BANBAN!劇場BANG!!」の公開を前に興奮しているようで、番組最後の「ゴーオン・ゼミナール」をも乗っ取る勢い。締めとして三人で乾杯をしていた。山田ルイ53世と召使ひぐち君の如し。ルネサンスとか言い出しそうだった。