炎神戦隊ゴーオンジャー第二十二話

東映炎神戦隊ゴーオンジャー」。
第二十二話「最後ノノゾミ」。武上純希脚本。鈴村展弘監督。
害地副大臣ヒラメキメデス(声:中井和哉)は害地大臣ヨゴシュタイン(声:梁田清之)の怒りを買い、ヘルガイユ宮殿から逃走。しかしヨゴシュタインは蛮機獣ボーセキバンキ(声:松本梨香)に対しヒラメキメデスの追討を命じた。尋常ではない。
敗走のヒラメキメデスは、ボーセキバンキの攻撃を受けて負傷していたところをゴーオンレッド江角走輔(古原靖久)以下ゴーオンジャー五人衆に救出された。ゴーオンゴールド須塔大翔(徳山秀典)とゴーオンシルバー須塔美羽(杉本有美)の両名がこの「仲間割れ」に危険な罠の気配を最初から感じ取っていたのに対し、ゴーオンジャー五人衆は多勢のボーセキバンキ一味による負傷のヒラメキメデス一人への攻撃に「弱い者イジメ」を見た。たとえ苛められている者がどのような者であろうとも、弱い者を苛めるという行為それ自体を許すわけにはゆかない!というのが走輔の正義であり、他の四人も同じ思いを共有しているのだ。
結局、ヒラメキメデスのこの悲劇は全て嘘だった。ゴーオンウイングスを騙まし討ちにするための罠だった。しかし、ヘルガイユ宮殿内で真相を知っていたのはヨゴシュタイン率いる「一枚岩」の害地目の軍団のみ。害水目と害気目の者は誰も知らされていなかった。「ヨゴシュタイン、仲間割れしていたのは嘘でおじゃるか?」と害水大臣ケガレシア(及川奈央)は驚いていたが、知将の害気大臣キタネイダス(声:真殿光昭)は「いいぞよ、敵を騙すには先ず味方からと云うぞよ」と首肯していた。それにしても、ヨゴシュタインとヒラメキメデスとボーセキバンキの芝居は迫真性に富んでいた。おかげでゴーオンウイングス以外の皆が騙されてしまった。
もっとも、大翔は最初から、ヒラメキメデスに生じた異変を罠と見破っていた。敢えてその罠にかかることでヒラメキメデスを返り討ちにしようと考えていたのだろう。だが、今回ばかりはヒラメキメデスが一枚上手だった。気象現象上の特異な条件下にある孤島に大翔以下ゴーオンウイングスを誘き寄せることに成功したのちは、自ら攻撃を仕掛けることなく自然の力によって、彼等に落雷の一撃を加えることに成功したのだからだ。「悪意の発動する予兆を読む御前たち、意志を持たぬ自然の動きは読めん」。大翔は走輔をはじめとするゴーオンジャーについて「先も読めないゴーオンジャー」と馬鹿にしていたが、世の中には先の読めないことが数多ある以上、読んで逆効果を招く事態も常にあり得る。何も読まずに反射神経的に己の信念に従って行動した方が正しい場合も多いだろう。ゴーオンジャーの強みがそこにある。彼等は戦闘の仕方を合理的に巧妙に洗練させることには殆ど関心を払わない。彼等にとって重要なのは、守るべきものを守ること、救うべきものを救うことにあるのだからだ。
それにしても、害地目の蛮機獣ボーセキバンキは(たとえ敵を欺くための芝居だったとはいえ)ヨゴシュタインからの直々の命を受けて副大臣の追討という重責を担っただけのことはあって、かなり威厳に満ちていた。丁度「仮面ライダーキバ」におけるクイーン真夜(加賀美早紀)のような。語尾に「ありんす」を付けるのは遊郭風とも聞こえるが、「いとをかし」「いとあはれ」「いとかなし」等の感嘆の語は(紡績機の糸に因んでいるのと同時に)、いかにも高級な女官のような風格を感じさせた。だが、糸を吐くときの「チュルリラ!」とは何だろうか。今googleで検索したところ松尾伴内の用語だとか。森昌子の越冬ツバメであれば「チュルリラ」ではなくて「ヒュルリララ」。
八月九日公開の映画「炎神戦隊ゴーオンジャーBUNBUN!BANBAN!劇場BANG!!」において、ガイアークは十三体もの蛮機獣のリサイクルを行うのだそうで、それについてケガレシアは「リサイクルってエコでおじゃらんか?」と疑問を呈したが、ヨゴシュタインとキタネイダスはそれぞれワイングラスを掲げて「まあまあ、それより…ルネッサンス!」と男爵風の乾杯をして誤魔化していた。