旅行記二-京都国立博物館&京都国立近代美術館

旅行記二。朝十一時頃にホテルを出て、阪急電車で京都へ。終点の河原町駅から徒歩で京都国立博物館へ行き、平常展示を観照。中世水墨画展示室では扇面画、近世絵画展示室では真浄寺蔵の曾我蕭白の障壁画を特集していて、何れも面白かったが、私的に最も心惹かれたのは絵巻展示室における誓願寺縁起。簡潔で無駄の一切ない造形性が面白く、特に和泉式部をはじめとする人物の描写は、平安時代の絵巻物の表現をよく研究しつつも、瀟洒を志向して洗練を極め、やや抽象性の境地にまで達したかのような印象がある。山水の形と色も、古画研究の成果と、いかにも江戸時代らしいクールな造形感覚を見せる。その感覚は光琳百図に近いが、この誓願寺縁起絵巻は江戸時代十七世紀の作品なのだとか。興味深い。中国絵画展示室には綠格(南田)の花ウ夕陽図や石濤の黄山図冊が出ていた。
展示を見終えて館内の売店に向かっていたとき凄まじい雷鳴が聞こえ、外を見れば豪雨になっていた。こんな天候の下、五条から三条までの、ただでさえ交通量の多い道路を延々歩くのは辛いと思われたので、暫く売店で立ち読みをして過ごしたあと意を決して夕方四時頃、三十三間堂の前からタクシーに乗り、岡崎公園京都国立近代美術館まで移動。閉館の五時まで一時間もない中、特別展「生活と芸術-アーツ&クラフツ展 ウィリアム・モリスから民芸まで」と平常展を急ぎ見て回った。閉館と同時に館を出たあと、星野画廊の展示を観照。最も気に入ったのは鹿子木孟郎の夏の風景画。藤田龍児の四点にも心惹かれた。なお雨の降る中、神宮道から河原町へ、三条から新京極通を経て四条にかけて延々歩いて、阪急電車河原町から梅田へ移動し、駅の近くで夕食を摂ってホテルへ帰り着いたのは夜八時半頃。