Q.E.D.証明終了第十話=最終回

NHK総合ドラマ8Q.E.D.証明終了」。第十話=最終回。
原作:加藤元浩。脚本:藤本有紀。音楽:海田庄吾。演出:伊勢田雅也。
今宵の最終回は、学校で行われた模擬裁判を通して、論理に徹することの正義を厳粛に描いたと見ることができる。この模擬裁判の司会進行をつとめた裁判長(田村亮)は本物の裁判官でもあるが、燈馬想(中村蒼)は、立証責任が検察官の側にこそあるにもかかわらず検察官がその責任を十全には果たしていない中で裁判長が与件を超えた知見に基づいて判断を下していること、それが「裁判の鉄則」を逸脱した越権行為であることを鮮やかに論証し批判した。
古来、西洋の哲学的な論理に「法廷イメージ」が見て取れることはよく知られていよう。哲学の確立者とも云える古代ギリシアプラトーンの対話篇自体がもともとはソークラテースの裁判を解釈する中で成立したものであるし、アリストテレースや聖トマス・アクィナスの論述にも「然りと否」の間の論証の応酬がある。カントの「批判」が「法廷イメージ」によって読み解かれるべきであるとの説には説得力と魅力がある。そうしたことを踏まえるなら、数学の天才少年である燈馬想の「証明」能力の証明の舞台として、模擬裁判というのは思いのほか相応しい。よい最終回だった。
なお、模擬裁判の場には「クイーン」=江成姫子(垣内彩未)、「ホームズ」=長家幸六(広瀬斗史輝)、そして「モルダー」=盛田織理(渋谷謙人)の探偵同好会三人衆とともに、軽音楽部ビジュアル系バンド「ナルシスツ」のシルキー(鈴之助)も参加。できれば上方落語研究会の咲坂亭K助(辻本祐樹)にも参加して欲しかったが、ともあれ賑やかな顔触れが揃ってくれて、その意味でも楽しい最終回だったと結論付けることができよう。