新番組=木曜劇場BOSS第一話

(以下、四月十八日昼記之。)
今宵からの新番組。
フジテレビ系。木曜劇場「BOSS」。第一話。
脚本:林宏司。音楽:澤野弘之和田貴史林ゆうき。プロデュース:村瀬健&三竿玲子。制作:フジテレビドラマ制作センター。演出:光野道夫。
役所においては一般に、出世競争に乗っている者を本省、或いは本庁に配置し、外れている者や未だ乗っていない者を地方機関に配置する。出世競争に乗っている者が地方機関へ行くのは昇格へ向けた調整のためだろう。そして地方機関の中でも、重要度の高い都市の機関と、そうではない都市の機関との間にも似た関係が成立するだろう。
だから、もし警察庁の官僚候補だった大澤絵里子(天海祐希)が何年も前に不祥事により降格されて出世競争を外されたのであるとすれば、地方機関の中で最も重要な機関である警視庁の、捜査第一課に新たに設置された特別犯罪対策室の室長に抜擢されたのはどういうことか?と先ずは驚かずにはいられないが、多分そこには、(劇中には描かれない可能性が高いとはいえ)警察官僚たちの間の派閥の力学が働いたに相違ない。その象徴が警察庁参事官補佐の野立信次郎(竹野内豊)に他ならない。
大澤絵里子の階級は警部。官僚としては最底辺の地位に留まっているわけだが、警視庁捜査第一課特別犯罪対策室長という職は、職名だけ見れば課長補佐級以上かと想像されるので、今回の人事は、階級と役職との相当という点で見る限り、破格の待遇だったかと解される。階級を降格処分後の地位のままに据え置きながらも役職だけは官僚候補としての立場を考慮して年齢相応に昇格させた恰好と見ることもできるのだろうか。
ともあれ警視庁捜査第一課特別犯罪対策室は本庁の課内室であるとはいえ、庁内の優秀な人材や専門家を集めたわけではなく、むしろ所謂「御荷物」と認定された者ばかりを集めて発足したらしいことが劇中に強調されていた。だが、優秀ではないとか問題があるとか云われることの意味は、各人物により異なると見受ける。例えば、片桐琢磨(玉山鉄二)はもともと捜査第一課の刑事であり、恐らくは権力闘争の煽りを受けての異動であると思しく、ゆえに「御荷物」と認定されたというよりは「敗者」と認定されているのだろうと想像される。他方、最年少の花形一平(溝端淳平)について云えば、交番勤務の若い巡査でしかない点のみが「問題」であるに過ぎない。
なお、岩井善治(ケンドーコバヤシ)という登場人物の基本設定は、玉山鉄二に割り振った方が面白くなっていたに相違ないと思われる。役柄を魅力的に表現できるのみならず役者の魅力をも引き出していたろう。このドラマの惜しいところがそこにあると云える。