仮面ライダーディケイド第十三話

東映仮面ライダーディケイド」。
第十三話「覚醒 魂のトルネード」。脚本:會川昇。監督:長石多可男
先週の第十二話の最後には、門矢士(井上正大)が、「アギトの力」に囚われて「アンノウン」に狙われていた芦河ショウイチ(山中聡)によって変身ベルトを奪われた挙句、仮面ライダーディエンド=海東大樹(戸谷公人)から致命的な攻撃を加えられようとしていた瞬間が描かれた。その手に汗握る瞬間の次の展開が今週の第十三話の冒頭にあった。小野寺ユウスケ(村井良大)が、人間の身体のまま、体当たりで門矢士を庇ったのだ。待望の展開だったと云わなければならない。
先に(第十二話において)ユウスケがこの「アギトの世界」を自身の「終点」「居場所」と決めたと宣言したことに対して門矢士が「やっと見付けた居場所の居心地はどうだ?」と冷やかしの言を放つときの、あの投げ遣りな口調も、怒りを隠さない表情も、この決意に対する諦め切れなさ加減をよく表していたように思う。どこまでも一緒に来て欲しいという思いを隠していない。
敢えて云ってしまえば、今朝のこの第十三話の見所は門矢士とユウスケとの間の深い愛の確認にこそあったと思う。無論それは、かつてクウガの世界でユウスケが「姉(あね)さん」と呼んで慕っていた八代藍(佐藤寛子)によく似た女性、八代淘子(佐藤寛子)と芦河ショウイチとの間の愛の確認の話と並行し連動して描かれた。「姉さん」に対するユウスケの深い思いも八代淘子に通じたが、もちろん八代淘子にとって最も大切な人が芦河ショウイチであることに変わりはなく、ユウスケは「姉さん」の笑顔を守るため、芦河ショウイチを連れ戻して、そしてユウスケは、門矢士との「約束」を守るため、或いはむしろ、多分、ユウスケの笑顔を守ろうとしてくれている門矢士を見守るため、再び旅立つことを告げた。
本来なら仮面ライダークウガに変身できるはずのユウスケがクウガに変身しないことの理由については先週ここに述べたが、改めて考えよう。
ユウスケは今回、海東大樹が「姉さん」の思いを踏みにじったのを知ったとき、この卑劣な相手に立ち向かおうとして変身しようとしたものの、未遂に終わり、結局、最後までクウガに変身することがなかった。仮面ライダーディケイド仮面ライダーアギトがアンノウンを相手に闘っている間も、彼のみはクウガに変身することなく、G3-Xの鎧を着たまま参戦していた。その仮面が破損して顔が半ば露出した危険な状態に陥ってもなお、そのまま戦い続けた。一度はクウガに変身しようとしかけたかにも見えたが、先週の第十二話から今週の第十三話までの話を考えるなら、変身しなかったことにこそ必然性がある。G3-Xが「姉さん」にとって大切なものであるからG3-Xを大切にしたいという思いを彼が抱いたことは既に第十二話において描かれたが、第十三話ではさらにもう一つの思いが加わった。G3-Xには、その眼に映る映像と耳に入る音声を、司令塔の八代淘子にまで届ける機能があるからだ。ユウスケは、芦河ショウイチ=仮面ライダーアギトの戦いの様子の全てを「姉さん」に見せたかったはずだ。そのためにはG3-Xでなければならなかったのだ。