アイシテル-海容第六話

日本テレビ系。ドラマ「アイシテル 海容」。第六話。
原作:伊藤実。脚本:吉本昌弘。演出:吉野洋
殺人が許される場面があるとすれば、それは戦争と死刑と正当防衛位のものだろう。判断力を欠いた未熟な者や、精神に異常を来たした者に対しては責任を問えないと判断される場合もあるのか知らないが、それが犯罪であるという事実が消えるわけではないだろう。このドラマの描く殺人事件の犯人、野口智也(嘉数一星)が犯人であるという事実は、どのような事情があるにせよ消えるものではない。そのことは前提しておく必要がある。だが、それでもなお、云わなければならない。彼は余りにも厄介な人物に遭遇してしまったのだと。
小沢清貴(佐藤詩音)という幼稚な相手の、余りにも無神経で嫌味で傲慢で説教臭い言動に接して、冷静に平然としていられる人がいるとすれば、それは既に人格者であるに相違ない。大人でさえも、彼の言動には苛立たずにはいられないはずだ。「親の顔が見てみたい」という批判の語があるが、その典型例を彼にこそ認めざるを得ない。
出会いということの恐ろしさを、思わずにはいない。清貴は智也に出会わなければ殺害されることもなかったろう…とも思われるが、むしろそれ以上に、智也こそ、清貴なんかに出会わなければ殺人なんか起こさなかったに違いないのだ。未知の者との出会いというのは実は怖いことなのだ。