旅行記三国立西洋美術館古代ローマ帝国の遺産-栄光の都ローマと悲劇の街ポンペイ展&東京都美術館トリノ・エジプト-イタリアが愛した美の遺産展

五連休の三日目。旅行記三。
朝九時半にホテルから外出。上野恩賜公園へ。国立西洋美術館で開館50周年記念事業として開催中の「古代ローマ帝国の遺産 栄光の都ローマと悲劇の街ポンペイ」を観照。
そもそも今回の旅行の目的がこれを見ることにあったのだが、期待していた以上の内容だった。ポンペイのメナンドロスの家のペリステュリウム出土のアポローン像は、数年前にBunkamuraポンペイ展で見たが、やはり美しい。ポンペイヘルクラネウムの壁画の色彩主義は後世のルノワールを超えている。ポンペイ出土のフレスコ画「セレネとエンデュミオン」における美少年エンデュミオンは、いかにも南国的な肉付のよい身体のしなやかさと、日焼けした肌の質感までも感じさせる。女神を魅了するのも納得の色香。
今回の出品中で最も美麗なものは、ソンマ・ヴェスヴィアーナのステルツァ・デッラ・レジーナ出土の「豹を抱くディオニュソス」。造形の古典的な完璧性に圧倒される。何時まで見ていても見惚れるし、次の展示室へ進んだあとも幾度も引き返しては見直してしまった程。幾つかの欠損、ことに背中の欠損が痛々しいが、全体像を存分に伝える現存部分の麗しさはそれを充分に補う。各部分の造形も、それらの相互の調和も、そして無論その全体像の造形も、何もかもが美しい。しかも、この大理石像の発掘には東京大学が主役をつとめたらしい。それもまた素晴らしい。兎に角、顔も身体も理想の美を実現していて、見入らざるを得ない。
最後の展示室では、古代ローマ帝国ポンペイの景観を再現した映像が上映されていた。東京大学象形文化研究拠点の制作した画像データを編集したもの。この映画の後半、ポンペイの「黄金の腕輪の家」の庭園を復元した映像には、予想外に感動した。一つ前の展示室にポンペイのフレスコ画「庭園の風景」とモザイク画「モザイクの噴水」の実物が出品されているのだが、それらは「黄金の腕輪の家」の庭園に面した部屋を飾っていたものだったのだ。映像の中では、現在は保存のためにそれらの装飾画を取り外されて寂しい様子と化した遺跡の現場の壁面に(バーチャルリアリティ上)それらの装飾画を戻して、さらに庭園の花壇や噴水も再現していた。
この映画を見たあと、改めて「庭園の風景」と「モザイクの噴水」の現物を見に行かないわけにはゆかなかった。その勢いで改めて「アポローン像」、「セレネとエンデュミオーン」等の壁画群、そして美の極みと評すべき「豹を抱くディオニューソス」を見直してから昼一時頃に展示室を出た。
展覧会図録とDVD、「豹を抱くディオニューソス」携帯電話ストラップ等を購入したあと、常設展を観照。館を出たのは夕方三時四十分頃。
さて、この中途半端な時間をどう活用できるか?と少しだけ思案した末、一直線に東京都美術館へ。開催中の「トリノ・エジプト展-イタリアが愛した美の遺産」を観照。入場まで三十分間もの待ち時間を強いられたが、混雑解消のためか閉館時間が三十分間も延長されたので、四時半からの一時間は観照することができた。場内を動き回ることも難しい程の人混みだったので、大きなものを中心に見たが、多分、見逃したものは殆どないかもしれない。展覧会図録のほかに「アメン神とツタンカーメン王の像」フィギュア付の携帯電話ストラップ、そしてイタリアのトリノグイド・ゴビーノ社のチョコレートを購入して館を出た。パンダ橋を渡り、上野駅の近くの食堂で遅めの昼食を兼ねた早めの夕食を摂ったあと、ホテルへ戻り、トリノのチョコレートを食いながら寛いだ。
新着メイルを確認したところ東京国立博物館メイルマガジンの到着あり、それによると、同館は今日が無料開館日だったのか。明日にでも行こうと予定していたのだが、むしろ今日と明日の順番を換えるべきだったかもしれない。少しだけ惜しいことをした。