傍聴マニア09第十話=最終回

日本テレビ系。ドラマ「傍聴マニア09」。第十話=最終回。
原作:松橋犬輔北尾トロ。脚本:田村孝裕。演出:本田隆一。
傍聴マニアを辞めた北森夫(向井理)が、その直後、今度は裁判員として法廷に戻り、傍聴マニア生活を通して目撃してきた事件と人々、そして見詰め直して来た自己自身をも振り返りながら、事件の真の意味を見抜いて、裁判員としての責任を全うした。国民の権利としての傍聴で学んだことが、国民の義務としての裁判員の任務を裏付けたわけだが、それにしても、裁判官と裁判員の並み居る中で、真の意味で事件を裁き得たのが北森夫一人だけだったのは少々凄まじい。被告人が胸中に秘めていた真の思いを見抜いて、彼から新たな証言を引き出した北森夫の見事な裁きに感動した山野鳥夫(六角精児)が一人で盛大な拍手と歓声を上げ、その所為で退廷を命じられるという小さな激動もあって、なかなかドラマティクな最終回だった。
とはいえ、審判の流れを反対方向へ逆転させて判決を引っ繰り返した北森夫のあの見事な裁きは、純粋に裁判員としての活動のみによって成し遂げられたものではなかった。裁判の中で感じた疑問点について考えるべく自ら現場へ足を運び、云わば現場検証をも試みた中で新たな証拠を発見した結果に他ならなかったからだ。彼は既に一度(第六話において)事件の真相を知るべく探偵のように行動したことがあった。結局、彼は傍聴マニア生活も継続しつつも、裁判所庁舎の維持管理業務を委託されている電気業者に正社員として就職できたようだが、その気になれば山野鳥夫という名のフィリップとともに探偵事務所を開業してもよかったのではないだろうか。