仮面ライダーW第三十七話

東映仮面ライダーW(ダブル)」。
第三十七話「来訪者X/約束の橋」。
脚本:長谷川圭一。監督:諸田敏。
鳴海探偵事務所に左翔太郎(桐山漣)を訪ねてきた今回の依頼人は、まるでディケイド鳴滝のような恰好をした冴えない紳士(中西良太)。だが、第六感に秀でた翔太郎の調査によって判明したところによれば、この鳴滝モドキの正体は脳科学者の山城博士。既に死去したことになっているはずの何人もの科学者たちの一人。しかも、怪人イナゴ女(佃井皆美)が暴露したところによれば、この山城博士こそは、かつて秘密結社ミュージアム園咲家の配下の科学者集団の一員として働いて、園咲家配下の「処刑人」として働いているこの怪人イナゴ女その人を開発したのみか、フィリップ(菅田将暉)の頭脳から「家族」に関する記憶を消去した張本人でさえあったのだ。
昭和の仮面ライダーは改造人間であるのに対して、平成の仮面ライダーは超人的な体質の持ち主が道具を得て変身する体であることが多いように思われるが、昭和の探偵物語を想起させるこの仮面ライダーW物語では、昭和の名探偵を気取ったような風貌のハーフボイルドの翔太郎が意外にも、あの謎の女シュラウド(声:幸田直子)の予想をどこまでも超えてゆく超人的な体質の持ち主だったらしいのに対し、平成の新時代の子どもとも見える天才少年フィリップが意外にも、限定的な意味においてではあるにせよ、云わば「改造」されていたと云えるのかもしれない。
秘密結社ミュージアム園咲家にも動乱があった。「恐怖の帝王」とも称されるミュージアム総帥の園咲琉兵衛(寺田農)が、次女の園咲若菜(飛鳥凛)に対して次代の王座を継承すべく「覚悟」を促すと同時に、組織への反逆の罪によって王世子の地位から追い落としたのみか居城からも組織からも追放した長女の園咲冴子(生井亜実)を抹殺すべく、「処刑人」として愛猫ミック=スミロドンドーパントを遣わした。
ミックの戦闘力が冴子をも凌ぐことは存分に証明されたが、同時に、ミックが冴子を致命的に追い詰めながらも殺害するには至らず、単にガイアメモリを回収するだけに留めたのは、かつて飼い主の家族の一員だった者への愛猫としての愛情を表したものとでも見るべきだろうか。だが、このハーフボイルドな感情は吉と出るか凶と出るか。
他方、恐怖の帝位を継承することを恐れる若菜姫は、フィリップに助けを求めた。だが、若菜姫に対して何とも形容し難い愛情を抱くフィリップは、若菜姫もまたミュージアムの幹部ではないか?と予て疑ってはいたが、それが疑惑どころか明白な真実であることをついに知ってしまった。同時に、若菜姫の必死の証言から、園咲家の内部に激動のあったことをも知ったはずだ。彼はどのように決意するのだろうか。