仮面ライダーオーズ第十七話

東映仮面ライダーオーズ/OOO」。
第十七話「剣道少女とおでんと分離ヤミー」。
新たに登場した仮面ライダーバース。変身するのは伊達明(岩永洋昭)。変身前の様子を見る限り一見あたかも好男子のような印象を受けるが、変身後の、戦闘中の、貪欲どころか邪悪でさえある顔付には殆ど戦慄せざるを得ない。まるで悪役のようだった。火野映司(渡部秀)がオーズに変身して闘っている間にあのような顔をしたことは一度もないという事実と対比させて見るべきだろう。
バースの戦闘の様子を物陰から窺っていた後藤慎太郎(君嶋麻耶)は、伊達明がセルメダル収集の業務によって報酬を受けて一億円を稼ごうとしている事実に驚き、衝撃を受け、不審に感じていたようだった。
後藤慎太郎と伊達明は、見た目だけではなく精神においても極めて対照的であると見られる。伊達明は、少なくとも彼自身の語っていたところを聞く限り、ヤミーとの戦闘それ自体には何の志もなく、単に金を稼ぐための手段としてだけ闘っているが、後藤慎太郎は世界の平和を守りたいという志のために己の栄達の道を捨ててきたのだからだ。それなのに、「闘う手段」は後藤慎太郎には与えられず、伊達明に与えられた。
厳密に云えば、「闘う手段」としてのバース変身権は後藤慎太郎に与えられる可能性もあったが、他ならぬ彼自身がそれを拒絶したのだ。世界に害を及ぼしかねない邪悪なドクター真木清人神尾佑)の道具になり下がることを潔しとしなかったからだ。年末年始の休暇中も己の身体を鍛えることを怠らず一人で黙々と路上を走っていた彼は、内心、やや後悔してもいた。「あんな男に媚びを売ってまでバースになる必要はない。…でも、その所為で、闘う手段を失ったんだとしたら…」。精神における善と身体における悪との間の葛藤という構図は、仮面ライダーの物語では馴染み深いが、この物語では今、後藤慎太郎において最も強く表れているのかもしれない。