仮面ライダーオーズ第十九話

東映仮面ライダーオーズ/OOO」。
第十九話「赤いメダルと刑事と裏切り」。
仮面ライダーバースに変身する権利と道具を与えられてセルメダル収集の業務を任された伊達明(岩永洋昭)は、鴻上生体研究所の所長室=研究室に勝手に住み着いていた。研究室が雑多な居住空間にされてしまった。これはドクター真木清人神尾佑)にとっては深刻な危機だ。なにしろ声の大きな乱暴者にまとわりつかれては研究活動に集中できないし、カザリ(橋本汰斗)との謀議もそこではできない。要するに計画の推進も思うに任せない有様と化していた。
しかも、あろうことか、伊達明は研究室内で勝手に大きな鍋を持ち込んで好物のオデンを煮ていて、そこへ、ドクター真木清人が何時も腕に載せて愛玩している不気味な人形「キヨちゃん」が落下してしまった。これはドクター真木清人にとっては最大の危機だ。
そして火野映司(渡部秀)とアンク(三浦涼介)も最大の危機を迎えた。
メズール(未来穂香)の身体=コアメダルを取り込んで複合化して進化したカザリと、彼の作り出した不気味な複合体ヤミーとを相手に、云わば事実上は三体以上の敵を相手に激しい戦闘を繰り広げていた彼等は、強い味方であり得るはずの仮面ライダーバースが呆気なく倒されてしまった中、苦境を打開すべくコアメダルを交換しようとした隙を突かれて、コアメダルを、一つを残して他を全て強奪されてしまったのだ。
前回までは無類の強さを誇った仮面ライダーバースが今回あんなにも呆気なく倒されてしまった理由は、カザリの発した「所詮セルメダル専用」という罵倒の語によって明快に説明された。仮面ライダーバースはセルメダルを収集するため、セルメダルのみで身体を構成し活動させる「セルメダル専用」の存在者であり、ゆえに、同じくセルメダルのみで生み出されるヤミー相手には強いが、セルメダルの源泉とも云えるグリードの敵ではあり得ない。云わば格が違うのだ。
もう一つ考え得るのは、もし仮面ライダーバースにもグリードに対抗し得る方法があったとしても、伊達明はそれを容易には知りようがないかもしれないということだろうか。なぜなら彼は、自ら豪快に宣言していたように、取扱説明書を殆ど読んでいないからだ。家電製品等でも、初歩の使用方法は説明書を読まなくとも解るかもしれないが、特別な使用方法を知るには、やはり説明書を読まなければならないだろう。伊達明は仮面ライダーバースの可能性を未だ最大限には引き出し得ていなかったのではないのか?と考えることができるかもしれない。
他方、仮面ライダーバースへの変身の権利を自ら潔く拒絶しておきながらも直後にそのことを後悔しないではいられず、変身の権利を得て活動を始めた伊達明に対しては嫉妬の情を禁じ得ないでいた鴻上財団ライドベンダー隊第一小隊長の後藤慎太郎(君嶋麻耶)は、今や全てを捨て、生まれ変わったつもりで、多国籍料理店クスクシエで働き始めた。彼の清潔な容姿にギャルソンの格好が余りにもよく似合う。職務に忠実な彼は、かつて宿敵だったアンクにからかわれても我慢して、反発しようとはしなかった。
ところが、凶悪犯が脱獄して周辺にいるとの報に接するや、ギャルソンの格好の後藤慎太郎は瞬時に元警察官の顔に戻った。そしてその直後、見るからに怪しげな人物(実際、この人物はカザリに脅迫されてその配下となっていて、アンクに接近して仲間であるかのように装い、油断させた上で裏切って、アンクのコアメダルを強奪することを企てていた!)がクスクシエに現れたとき、ギャルソンの格好の後藤慎太郎は瞬時に隊長の顔に戻り、店員の泉比奈(高田里穂)と店長の白石知世子(甲斐まり恵)を庇い、守ろうとした。その人物の腕を掴み、抑え付け、押し戻し、店に入れようとはしなかった。身体は細いが、力は強かった。格好よかった。