橋田寿賀子ドラマ渡る世間は鬼ばかり第十部第十四話

TBS系。橋田寿賀子ドラマ「橋田壽賀子ドラマ渡る世間は鬼ばかり」。
最終部=第十部第十四話。
小島眞(えなりかずき)は、大井貴子(清水由紀)との関係の現状について、心配した母の小島五月(泉ピン子)から説明を求められたとき、大井貴子の父の大井道隆(武岡淳一)からの懇篤な手紙を見せながら、大井貴子との関係は旧に復したと述べた。帰国後の大井貴子は渡航前に比して別人のように冷たかったが、大井道隆の介護を引き受けたい旨を述べて誠意を見せた結果、漸く昔の表情を取り戻して愛情を見せるようになってくれたのだと説明したのだ。公認会計士として独立し得た暁には再び婚約することをも約し得たとまで主張したのだが、これは先週の第十三話を視聴した者にとっては大いに違和感のある説ではないだろうか。
確かに大井貴子は、小島眞に対して抱いた想いは今も変わってはいないと述べてはいたが、それをどこまで本気にしてよいものか。あのときの大井貴子の関心事は、父に対して下手な介護を施そうとする小島眞に、その迷惑な愛情をどうにかして辞めさせることにこそあったはずだ。
しかるにあのときの小島眞は誰の眼にも狂気の相を帯びているように見えた。森山壮太(長谷川純[ジャニーズJr.])ばかりか岡倉大吉(宇津井健)や青山タキ(野村昭子)の助言も聞かず、冷静に考えることもなく己の強烈な思い込みだけで行動を起こしていて、それが大井道隆に対してどれだけ心身の負担を強いることになるかを、全く考えることができていなかった。そうした中で大井貴子は、小島眞にこれ以上の刺激を与えないように配慮しながら、云わば機嫌を取りながら遠ざけなければならなかったはずだ。
もっと重要なこととして、小島眞の機嫌を取りつつ遠ざけることに必死だった大井貴子も、流石に小島眞と結婚したいとまでは述べていなかったのではないのか?という点がある。小島眞は、今や現実を直視できず、記憶を改竄して無理矢理に安堵を得ようとしているのではないだろうか。