渡る世間は鬼ばかり第十部第十六話

TBS系。橋田寿賀子ドラマ「橋田壽賀子ドラマ渡る世間は鬼ばかり」。
最終部=第十部第十六話。
今宵の一番の見せ場は、高級料理店「おかくら」夜の営業の終了したあとの、岡倉家における節分の豆撒きの場だろう。岡倉大吉(宇津井健)と青山タキ(野村昭子)が「鬼は外」と叫びながら投げ放った豆が、そこへノコノコ現れた小島眞(えなりかずき)の顔に命中したのだ。もちろん岡倉大吉も青山タキも、小島眞を「鬼」だとは思ってもいないが、「おかくら」の従業員である森山壮太(長谷川純[ジャニーズJr.])と大井貴子(清水由紀)にとって小島眞の卑屈な言動の数々が「鬼」のように酷いものであるのは間違いない。そのことをよく表した場面だった。
大井貴子と父の大井道隆(武岡淳一)は、両名のために献身し続ける森山壮太を感謝の眼で見詰めていたが、それを見た小島眞の、森山壮太への憎悪に満ちた眼には、誰もが戦慄せざるを得なかったのではないだろうか。
森山壮太はあくまでも小島眞への恩と友情の証として、その代理人として、大井道隆を助けている意であることを繰り返し強調しているのに、小島眞にはどうしても、この友人が己の大切な恋人を奪い取ろうとしているのではないかと思われてならないらしい。森山壮太が大井貴子に好意的であるよりはむしろ大井貴子が森山壮太に好意的であるのは一目瞭然であるのに、小島眞はその事実から目を逸らしたいのだろう。