デカワンコ第六話

日本テレビ系。土曜ドラマデカワンコ」。第六話。
警視庁刑事部捜査一課の第八強行犯捜査の殺人捜査第十三係の新人のワンコ刑事、否、デカワンコこと花森一子(多部未華子)は、俗にゴシック風と形容されるあの豪奢な服飾を愛好する女子の間では密かな著名人、否、殆どカリスマでさえあったようだ。そして意外にも青木琴美渡辺直美)もあの服飾の愛好家だったらしい。
そうした格好をした男女の集まる豪奢なレストランに、今回の殺人事件の関係者が出入している可能性があると見た第十三係は、その店が「イケメンに限る」という条件で店員を募集していたことから、キリこと桐島竜太(手越祐也)に潜入捜査を命じた。彼は店員として採用され、優雅なスーツ姿で働き始めたが、その後、ワンコが同店で開かれる華やかな茶会に乗じて潜入したときには、キリは何時しか所謂ゴスロリの女装をしていた。どのようなわけで彼が女装するに至ったのか。大勢の客の前でダンスを披露するように命じられたあと、いよいよ踊り始めようとした瞬間のあと、一体何があったのか。彼自身によれば女装に至るまでには色々流れがあって、説明すれば長くなるらしいが、結局、説明はなかった。この説明のなさ加減も面白かったが、結果として、コマ刑事こと小松原勇気(吹越満)をはじめ第十三係一同はキリには女装癖があるに違いないと認定してしまっていた。
今回も隈なく面白かったが、中で一つ注目に値するのは、警視庁=本庁と警察署=所轄との間の奇妙な関係が描かれたところ。近年の刑事ドラマでは通常、暴走する所轄署と堅苦しい本庁との対比や対立が挿入され、或いは主題化されるが、このドラマでは逆転しているのだ。
特別捜査本部の会議の席上、本庁の第十三係の刑事たちが「番場の忠太郎」だとか「瞼の母」だとか「ワンコが着ているあれ」だとか妙な話題で勝手に盛り上がっている間、所轄署の刑事たちは何の話かも解らず困り果てたような顔で見詰めていた。もっとも、視点を変えてみれば、これは一応、本庁が所轄を置いてきぼりにするという馴染みの構図でもあるのだが、なにしろ本庁の刑事たちの話題は「瞼の母」や「ゴスロリ」のことだったのだ。ついに我慢し切れなくなった警察署長(大河内浩)が「本庁さん、さっきから話についてゆけないんだが、ワンコとは?」「“お茶会ナウ”とは?」と真面目に訊ね始めたのも傑作だった。