仮面ライダーオーズ第二十六話

東映仮面ライダーオーズ/OOO」。
第二十六話「アンクとリングと全部のせ」。
腕の負傷を理由にして引退を決意した元ボクシング選手の岡村一樹(福井博章)は実はパンチドランカー。たとえ腕の負傷がなかったとしても、これ以上はボクシングを続けることができない。同じように、火野映司(渡部秀)も実はパンチドランカーのようなものだった。仮面ライダーオーズに変身して闘い続けることは彼の身体に深刻な影響を及ぼしていた恐れがある。それでも二人とも、「引っ込んでいる方が体に悪い」と云い張って、闘うことを止めようとはしなかった。
火野映司は偶々出会ったアンク(三浦涼介)から能力を与えられて仮面ライダーオーズに変身しているが、この能力が人間の身体にどのような悪影響を与えるかについては、アンクは予測できている可能性があるが、火野映司は負担の大きさを実感しつつも、正確には把握できていないのだろう。
この一点において仮面ライダーオーズ仮面ライダーバースとは違う。仮面ライダーバースは鴻上生体研究所のドクター真木清人神尾佑)によって開発された兵器であるから、人間の身体への悪影響の程度や範囲についてはそもそも予測されているはずであり、それだからこそ伊達明(岩永洋昭)のような屈強の人物がその戦闘員として抜擢された。しかも伊達明は自身が医師であるから、身体への悪影響の程も把握できている。彼が後藤慎太郎(君嶋麻耶)には現時点では仮面ライダーバースへの変身が無理であると考えるのは、変身による身体への負担に、現時点の後藤慎太郎の身体が耐え切れないはずであることを、医師として判断できるからこそだった。
後藤慎太郎は本来は(そして多分、今でも)鴻上財団の一員であって、仮面ライダーオーズの戦闘には深く関与してはいたが、戦闘のことしか知らず、変身による身体の悪影響のことを何も知らなかった。火野映司の身体を心配する中で彼は己の無知を反省した。彼は変身のことをもっと正確に調べるために、鴻上財団へ復帰することを決意した。永らく職場を放棄していたのだから「頭下げなきゃなんないよ?」と軽く心配してみせた伊達明に、後藤慎太郎は「土下座でもしますよ」と答え、伊達明は笑顔で納得した。
後藤慎太郎は「プライドを捨てたら終わりだ」と考えていて、ゆえに狂気の科学者ドクター真木清人に頭を下げるのを潔しとはしなかったが、今や鴻上財団会長の鴻上光生(宇梶剛士)ばかりかドクター真木清人にまでも、頭を下げるどころか土下座でもして構わないとまで覚悟を決めている。大きな変化だ。オウム型ヤミー発生の犯人としてアンクを疑っていた件についてアンクに謝罪したのも同じ変化の表れに他ならない。
だが、後藤慎太郎は「プライドを捨てた」のではない。頭を下げてでも、土下座をしてでも獲得すべきものを獲得することの正義を知ったということだろうし、何よりも、頭を下げても、土下座をしても己の尊厳が損なわれることは一切ないという一段階上のプライドを身に着けたのではないだろうか。
青いオウムのような姿をしたヤミーを発生させたのは鳥の系統のグリードではあるはずだが、鳥の系統のグリードであるアンクではなかった。アンクの他に、アンクと同じく赤のコアメダルを使いこなし、アンクの腕と同じ腕を持つ鳥の系統のグリードが新たに出現したのだ。しかもその「誕生」を鴻上財団会長の鴻上光生は把握していた。知っていたばかりか、誕生日ケーキまで拵えて祝福していた。