仮面ライダーオーズ第三十四話

東映仮面ライダーオーズ/OOO」。
第三十四話「親友と利用とその関係」。
火野映司(渡部秀)とアンク(三浦涼介)との間の、互いを仲間と思っているわけでは必ずしもなく、むしろ最終的には敵であると理解しながらも、最強の敵としてその力を認め、信頼してその信頼の上に互いを利用し合う同盟関係を築き上げた奇妙な関係。紫のコアメダルによる己の暴走を止めることができるのはアンクだけであると確信して、敢えて紫のグリードと化して暴走してでも、敵を撃破して危機を打開することを選んだ火野映司と、彼の暗黙の狙いを全て黙って理解して、紫のグリードと化して暴走していた彼を、紫の仮面ライダーオーズを、敢えて一人で引き受けたアンク。
この余りにも濃厚な「愛」を目の当たりにして、火野映司の最愛の友でありたいと欲望していた北村雄一(中山卓也)は敗北を認めて去った。
北山雄一の経営する娯楽施設内の植物園の空中に作られた白いフクロウ型ヤミーの大きな巣の中で、伊達明(岩永洋昭)と後藤慎太郎(君嶋麻耶)も互いの力を認め合い、信頼を深めていた。
後藤慎太郎が白いフクロウ型ヤミーに捕えられてそこへ連れて来られる事態に至った原因は、仮面ライダーバースに変身しなかったからだと云ってよい。それに先立って伊達明がフクロウ型ヤミーに捕えられて連れ去られたとき、あとにはバースに変身するためのベルトが残されていた。火野映司は後藤慎太郎がそれを用いてバースに変身することを期待したが、後藤慎太郎は自身には未だバースに変身できるだけの力量がないと判断し、変身しようとはしなかった。その隙を突かれて彼はヤミーに捕えられたのだ。
後藤慎太郎がバースに変身できるだけの力量が己には未だないと判断したのは、多分、伊達明に比して己の力が未熟であると考えるからだったろう。バースに変身して伊達明と同じように闘うことができるためには、伊達明にも認めてもらえるだけの、鍛えられた身体と心を持ち合わせなければならないと考えていたろう。
これに対して伊達明は、身の丈を超えた力は身を滅ぼすという後藤慎太郎の決断を評価した上で、後藤慎太郎に対し、己の実力にもっと自信を持て!と告げた。彼は、現在の後藤慎太郎にはバースに変身できるだけの力が既にあると診断していたのだ。「勇気を持て!次にチャンスがあったら、そのときはおまえがバースだ。」「俺のピンチはおまえのチャンスだ。これでも信じてるんだぜ?後藤ちゃんのこと」。
後藤慎太郎を厳しく鍛え、そして後藤慎太郎からも師のように尊敬されている伊達明は、今では後藤慎太郎を、弟子どころか対等に信頼し合う仲間として、否、それどころか、バースに変身する資格をめぐり十分に競合し得るという意味での、よいライヴァルとして認めていたのだ。ここでも、競い合える者こそが最も友であり得ることが確かめられている。そうであれば北山雄一が何故ダメだったのかは明白だろう。彼は庇護や保護や支配によってしか友になり得ないと思っていたからだ。