仮面ライダーオーズ第四十三話

今日は朝から夕まで殆ど休憩も取らず大いに仕事を進め、サーヴィス残業してから帰宅した。大いに疲れているので直ぐに寝た。(ゆえに本日の項については翌日の夕方に記之。)
ところで。
東映仮面ライダーオーズ/OOO」。
第四十三話「ハゲタカと対立とアンクリターンズ」。
色々面白い場面の多かった今朝の話の中でも、最も面白く迫力のあった場面は、ドクター真木清人神尾佑)の城館の大広間で何時ものように寛いでいたカザリ(橋本汰斗)、メズール(未来穂香)、ガメル(松本博之)の前に、復活を遂げたアンク(三浦涼介)とウヴァ(山田悠介)が現れたところ。
既に消え去っていたはずの両名の姿を見たカザリの、驚いて、しかも悔しそうで、焦って、少し怯えてもいるかのような表情が特に見所だった。若いのに芸達者な人々を集めたからこその見せ場だったと評してよい。
ウヴァの「執念深さ」は、アンクが評した通り、実に感動に値する程ではあるが、同時に、ウヴァの目の付け所のよさにも感心するほかない。これまでも彼は、多くの人々に借金をさせては高い利息を付けて返済させて儲けることを欲望する闇金融業の会社の経営者と社員の全員や、正義を実現するために悪い奴等を打倒して排除したいと欲望する父子に目を着け、ヤミーの親として利用してきたが、今回の彼が目を着けたのは、恋をして幸福に生活する若い男子に嫉妬して彼等を不幸な目に遭わせたいと欲望する孤独な廃品回収業者の中年男だったのだ。
とはいえ、その男に目を着けた時点でウヴァは緑色のコアメダル一枚でしかなかった。メダル一枚の哀れな姿で流浪していたに相違ない彼は、女子に愛される幸福な若い男子への嫉妬の情を隠さない哀れな中年男に目を着け、先ずはその男の身体を乗っ取った。これによって漸く、自由に動き回ることのできる身体を獲得できたが、グリードとしての体力や気力を取り戻すためには大量のセルメダルを獲得しなければならない。大量のセルメダルを獲得するためには、少なくとも一枚のセルメダルを持っていなければならない。しかるに、わずか一枚のコアメダルでしかない現在の彼はそれさえも所有していない。自動販売機の下やゴミ捨て場、公園の草花の陰等を捜し歩いたこともあったかもしれないが、もちろん見付からなかったろう。
好機の到来を待ち続けるしかなかったウヴァは、その間、廃品回収業の仕事に従事していたに違いない。なぜならそれが中年男の生業であり、身体を維持するためには人間の食生活を摂る必要があるし、何よりも、この男の仕事の道具であり移動の手段でもあるのみならず現在の住居であり唯一の居場所でもある軽トラックを維持管理する必要があるからだ。ウヴァは廃品回収の仕事に従事し、貧しい食を摂り、車内で寝泊まりをしながら、只管、好機の到来を待っていたはずだ。
無為に待っていたわけではない。ヤミーやグリードや仮面ライダーオーズの気配を感じたときには、軽トラックを飛ばしてその現場へ行き、戦闘の一部始終を目撃していたと思しい。
そして好機は到来した。仮面ライダーオーズ=火野映司(渡部秀)が、死闘の末にロスト=アンク(飛田光里/声=入野自由)のコアメダル三枚を破壊して倒し、アンクを解放したのだ。カザリの一党において事実上の盟主だったと云うも過言ではない最強のグリードが消滅したのだから、ウヴァにとって不利な要素が一つ消えたわけだが、この事件の意味はそれだけではない。これはウヴァが復活を遂げる上では重要な進展だ。なぜならウヴァにとって手を組み得る相手はアンク以外にないからだ。カザリは復讐すべき相手であり、同盟はあり得ない。メズールとガメルは仲間であり得るが、今はカザリの軍団に加わっているし、ウヴァの復活を実現し得る作戦を考案できるとも思えない。ウヴァを復活させることに戦略上の意義を見出し、復活のための作戦を考案して実行できる唯一のグリードはアンクであり、そのアンクが復活したのだ。しかも復活したアンクは、もはや火野映司や人間たちと一緒に行こうとはしなかった。境遇の変化は価値観や性格を変えるのだ。全てがウヴァには望ましかった。これ以上の好機はない。
火野映司から離れたアンクは少々途方に暮れていた。邪魔な「偽物」ロスト=アンクは消えたが、代償として赤のコアメダルを三枚も破壊されてしまい、完全体アンク復活の可能性も消えた。完全復活できなくとも、それに匹敵する力を得るにはどうすればよいのか。思案していたアンクの視界に、廃品回収業「草田リサイクル」の軽トラックが入ってきた。車を運転している冴えない中年男の眼が緑色に光り、アンクはウヴァの気配を察した。「まさか?」とアンクが驚いたのは、メダル一枚の哀れな姿と化していたはずのウヴァが今なお生きて、しかも復活を夢見て活動していた執念深さに感嘆したからだろう。その瞬間、アンクは逆転勝利の道を見出したようだ。そのための武器の一つとしてウヴァを利用すべく、中年男をヤミーの親にして、ウヴァ復活のためのセルメダルを収集させることにした。もちろんウヴァの側も、アンクがそのように行動するだろうことを予想できていたに相違ない。
ハゲタカ型ヤミーを使役したアンクのセルメダル収集の作戦に対しては、もちろん火野映司と仮面ライダーバース=後藤慎太郎(君嶋麻耶)が何時ものように果敢に立ち向かったが、アンクはそれをも想定して作戦を練っていたと見られる。火野映司と後藤慎太郎の見事な連携によってハゲタカ型ヤミーは倒されたが、そこで生じた大量のセルメダルは廃品回収業の軽トラックの荷台に受け止められたからだ。軽トラックの荷台の上空でヤミーを倒させるように仕向けたのだとさえ云えなくもない。
大量のセルメダル収集に成功した軽トラック上のアンクは、運転席にいる中年男の身体を借りた緑のコアメダルを、「全く、おまえの執念深さには感心する。メダル一枚で、よくここまで来れたものだ」と労った。その一枚のコアメダルは中年の身体から離れてセルメダルの山に飛び込み、消えていた本来の身体を再構成し始めた。この瞬間、ウヴァはカザリとロスト=アンクによって倒されて、メダル一枚の哀れな姿にされて以来の苦しかった日々を回想した。アンクは「俺のおかげだ。きっちり恩返ししろよ」と語りかけたが、不完全体ながらも見事に復活を遂げたウヴァは「俺の実力だ」と自慢した。しかし感謝の念を抱いているに違いないことは嬉しそうな声から窺えたし、アンクも、ウヴァが素直に礼を云うような奴ではないこと位、よく知っていたろう。そのような意味で、実に味わい深い場面だった。
そのあとにドクター真木清人の城館へのアンクとウヴァの入城の場面が来て、カザリは大いに動揺するのだ。しかも、ハゲタカ型ヤミーが派手に活動していた間、アンクは既にドクター真木清人に共同戦線の話し合いを持ちかけていたのだ。やがて真木清人が城に戻り、アンクとウヴァを加えた新たな集団を立ち上げることを宣言するかもしれない。そのときカザリがどのように反応し、どのように行動するのか。次週、いよいよ目が離せない。