渡る世間は鬼ばかり第十部第四十話

TBS系。橋田寿賀子ドラマ「橋田壽賀子ドラマ渡る世間は鬼ばかり」。
最終部=第十部第四十話。
色々な出来事の盛り込まれた一話だったが、最も大きな出来事だったのが小島眞(えなりかずき)の恋物語における新展開にあったのは云うまでもない。このドラマ自体が、もはや小島眞を光源氏に見立てた源氏物語であると云うも過言ではないかもしれない程だ。
新展開を生じた発端は、小島眞が職場の上司である長谷部力矢(丹羽貞仁)を伴って、母方の祖父である岡倉大吉(宇津井健)の高級料理店「おかくら」へ行ったことにある。ここにおいて見落とせないのは、この店では、小島眞の元恋人で今は友である大井貴子(清水由紀)が働いていること、そして長谷部力矢は、妹の恋敵のようなものである大井貴子がどのような女子であるのかをよく見ておきたいと考えていたことだ。
小島眞にとって不幸だったのは、(1)小島眞と大井貴子が当面は結婚しないことを既に互いに確認し合ったにもかかわらず現時点では誰にもそのことを公表せず二人だけの秘密にしていること、ゆえに(2)両名が既に別れたことを知らない「おかくら」の人々は両名が互いへの愛を確認し結婚を改めて約したろうと勝手に思い込んでいること、しかも(3)この店の人々は両名の関係については周知の公然の事実であると思っていて何時でも賑やかに話題にしてしまう癖があることだ。
これらに加えて今回に特有の問題として、大井貴子は父の得た莫大な財力によって新たに広い住居を求めることができて、この日、その移転の作業のため、「おかくら」を休んでいたのだ。
当然の結果として今回、大井貴子の不在に気付いた小島眞に対し、店の人々は大井家の転居の事実をなぜ小島眞が知らないのかと驚きつつも、いつものように岡倉大吉や本間長子(藤田朋子)や青山タキ(野村昭子)や森山壮太(長谷川純[ジャニーズJr.])は大井貴子について、小島眞と長谷部力矢の前で堂々と話題にし続けた。
小島眞は、大井貴子の転居について何も知らされていなかったことを知って落ち込まずにはいられなかった。長谷部力矢はそれを見逃さなかった。
長谷部力矢は好機を見出した。早速このことを妹の長谷部まひる(西原亜希)に聞かせたところ、案の定、長谷部まひるは俄然やる気を出し始めた。小島眞と大井貴子の関係が上手く行っていないのであれば、小島眞を略奪するのも夢ではないと考えたのだ。ここにおいて長谷部力矢は意外にも、長谷部まひるのこの意欲に少し歯止めをかけようとしたかに見えるが、無論これは芝居に過ぎない。長谷部まひるのこの意欲が本物であるかどうかを確かめておきたかったのだろう。彼の歯止めをも却下して意欲をますます燃え上がらせた妹の様子を見て、彼が笑んだのはその証拠だ。
長谷部兄妹の反撃はどのような結果を生じるのか。次週以降の展開に期待しないわけにはゆかない。
この他の出来事にも軽く触れておこう。
先ず本間日向子(大谷玲凪)はインターネット上で知り合った「トモ君」こと乃木智(菊池風磨[ジャニーズJr.])と再び遠足をした。
野田弥生(長山藍子)の家には、また一人、家族が増加した。新たに加わったのは、野田勇気(渡邉奏人)の同級生、篤(小林海人)。彼は母と子だけの二人家族で健気に生活していたが、現在その母が病院の集中治療室で闘病中であるとか。野田良(前田吟)は彼を当面は家族同然に扱うことを決意し、近い内に皆でキャンプに出掛けるべく計画を立て始めた。なるほど、そういう行為にも意味はあるのかもしれないが、先ずは彼の母を見舞うべきではないのだろうか?と思った視聴者は少なくなかったろう。