渡る世間は鬼ばかり第十部第四十三話

TBS系。橋田寿賀子ドラマ「橋田壽賀子ドラマ渡る世間は鬼ばかり」。
最終部=第十部第四十三話。
今宵の話の大部分は、野田弥生(長山藍子)と野田良(前田吟)の奇妙な大家族の物語における新展開と、大原葉子(野村真美)と大原透(徳重聡)の間の双子の出産とを描くことに費やされた。とはいえ後者の話には大して意味があったとも思えない。むしろそれは前者の話に厄介な要素を付け加えるための手段でしかなかったようにも見える。
このところ野田家には、野田弥生と野田良の孫にあたる野田勇気(渡邉奏人)の同級生、合田篤(小林海人)が同居していた。彼は母と子だけの二人家族で健気に生活していたが、その母が病院の集中治療室で闘病中だったので、心配した野田勇気が合田篤を野田家に連れてきたのだ。そして盆には、野田良は合田篤をも含めた子どもたち皆を連れて山奥の河原へキャンプに出掛けていたが、甚だ不幸にも、その間に合田篤の母は逝去した。合田篤は幼くして孤独の身となったが、実は彼は母が入院した時点で既に母との死別を覚悟できていて、孤独の身となったのちは然るべき施設へ入居することも決意できていた。ところが、野田勇気はそれでは納得しなかった。合田篤を野田家の家族として迎えて一緒に暮らしたいと主張したのだ。しかし野田弥生はそんな無責任なことはできないと考え、野田勇気の留守中にでも合田篤を施設へ送り出してしまおうと計画した。
この計画のために野田弥生は、あろうことか、大原葉子の出産を利用してしまおうと思い付いた。大原葉子の生んだ双子を見せてやる旨を云えば無類の子ども好きの野田勇気が喜ばないはずがないから、それで野田弥生と野田勇気の二人で病院へ出かけた隙に、合田篤には出て行ってもらうことにしたのだ。この作戦は実行されたが、野田勇気は心を傷付けられた。怒っただけではなく、大人への不信感をも表明した。当然だろう。信頼していた祖母に完全に騙されたのだからだ。
野田弥生がどうして子育てに失敗し続けてきたのか、その原因の一端を垣間見ることができたような気がする。野田弥生は鋭い直観力によって常に真実を捉え、的確な選択肢を見抜くことができるが、どういうわけか言動においてはそれを正しく表現することができないのだ。
ともかくも、野田勇気が抱いてしまった大人への不信感、ことに野田弥生への不信感はどのようにして払拭され解消され得るのか。次週以降に明らかにされることだろうが、今一つ興味が湧かない。
現在、このドラマで最も興味深く見守ることのできる話題を挙げるとすれば、山下久子(沢田雅美)のインターネット餃子店「幸楽」が失敗しないのかどうかという問題や、小島キミ(赤木春恵)等の帰国の問題と並んで、やはり小島眞(えなりかずき)の色恋物語の行方の問題を挙げるしかない。
小島眞の物語には、急展開を生じる原因になり得る出来事があった。小島眞と大井貴子(清水由紀)との恋を何とか成就させ、結婚させたいと願望する大井道隆(武岡淳一)が、そのための話し合いの場を設定して実行することを森山壮太(長谷川純[ジャニーズJr.])に依頼したのだ。もちろん森山壮太は尊敬する大井道隆からの依頼を快諾して、早速、小島眞に連絡を取った。大井貴子と小島眞との話し合いの場を設けるから是非とも来るように告げたのだが、注目すべきは、その場には彼自身も同席するばかりか、どういうわけか、長谷部まひる(西原亜希)にまでも同席してもらう意であることをも述べたのだ。森山壮太は何を考え、何を仕掛けようとしているのだろうか。