デカワンコ新春スペシャル

日本テレビ系。土曜ドラマデカワンコ」新春スペシャル。
昨年一月から三月まで約三ヶ月間にわたって放送された全十話の刑事ドラマ「デカワンコ」については、四月末に番外編が放送され、その中で、やがてさらなる特別編の放送も予定されていることが予告され、また、その特別編のためにパリで撮影が行われる予定でもあることも説明されていた。その特別編が今宵のこの「新春スペシャル」に他ならなかった。
内容は盛り沢山で、始めに休暇を利用してパリへ旅行していたワンコこと花森一子(多部未華子)が、なぜかパリへ出張してきていたコマこと小松原勇気(吹越満)、キリこと桐島竜太(手越祐也)、デークことデューク・タナカ(水上剣星)の三名と遭遇し、また、謎の少女レティシア(ローランス由美)とも出会って一寸した「恋」の騒動に巻き込まれたのち、物語の舞台は唐突に江戸時代、元禄期の江戸城下へ移り、水戸中納言徳川光圀伊東四朗)の御一行とともに「御犬様」をめぐる事件を解決した上、征夷大将軍徳川綱吉田口トモロヲ)に文句を云うため江戸城へ登城すればケンペルの娘(ローランス由美)とも出会い、このことから、パリにおける「恋」の騒動の解決の糸口を見付けることができた(と勘違いした)ワンコは、現代の東京において改めて奔走することになる…といった具合。誠に盛り沢山。
だが、盛り沢山だから面白い…というわけでもない。ドラマの冒頭を華々しく彩ったパリでの撮影に関して云えば、どう考えても出演者と制作者の慰安旅行でしかなかったろう。もちろん慰安旅行は大変結構だが、ドラマを楽しくしたわけでもなく、美しい景色を楽しませてくれたわけでもなかった。
他方、時代劇の部分に関して云えば、徳川綱吉を単なる悪役にはせず、むしろ徳のある君主としての側面を出したのは近年の知見をよく学んだものと思うし、何よりも、北町奉行所の同心の門馬(升毅)と、岡引の銭形平次ならぬ桐形(手越祐也)の両名の、小物の悪役振りが楽しかった。ワンコが投獄された牢屋の牢名主(佐野史郎)が、脱獄して事件の解決へ赴こうとするワンコに、まるでガラ刑事こと五十嵐太一(佐野史郎)その人のように、「鼻だけじゃない。目、耳、手、脚、口、全部使って調べて調べて調べ尽くせ!考えるのはそのあとだ」という「現場百回」の教えを授けた場面には、やはり視聴者を熱くさせるものがあった。(ただし、これを熱く感じるのは昨年のこのドラマ全話を見た視聴者に限られる。)
ところで。
甚だ気になること一点。パリから日本へ来た謎の少女レティシアが実はモナカ王国の王女であるという事実と、その恋の相手があろうことかシゲこと重村完一(沢村一樹)であるのかもしれないという仮説について説明する際にワンコが、シゲがもしレティシアと結婚したなら、シゲは直ちに王子となり、将来は国王にもなるだろう…と述べたのだ。一般論で云えば多分、王女と結婚した男子がその王女の国の王に即位できるのは、その男子が既に別の国の王世子や王子以上の地位にある場合に限られるのではないだろうか。そうでない場合は、女子に王位継承権を認めている国であるなら、王に即位できるのは王女の側でこそあれ、夫の側ではあり得ないのではないかと思われる。娯楽でしかないテレヴィドラマ中の台詞について以上のようなことを指摘するのは無粋であると感じる者もおられるかも知らないが、国民生活を破壊しつつある勢力によって皇室典範改正という重大な問題までもが提起されている現状を踏まえるなら、劇中の台詞といえども、現実界の世論にとんでもない悪影響を及ぼしかねない恐れ、それどころか悪影響を及ぼしてゆく運動の一環である恐れを、想定しておく必要がある。