仮面ライダーウィザード第三十八

平成「仮面ライダー」第十四作「仮面ライダーウィザード」。
第三十八話「奪った希望」。
操真晴人(白石隼也)の過去を知る人々二名中の少なくとも一人が今回のゲート。現時点でゲートと目されている人物、篠崎和也(岸田タツヤ)は、かつて操真晴人と一緒にプロのサッカー選手を夢見て日々練習に励んでいたが、操真晴人と接触したとき脚を負傷して、一時は夢を諦めざるを得なくなった。そのとき責任を感じた操真晴人は、自らサッカーを辞めて篠崎和也の前から姿を消した。
その後一年間、何とかサッカーへ復帰すべく練習に励んでいる篠崎和也のため、彼の恋人、直美(大谷澪)は支援に努めてきた。直美は篠崎和也が負傷した当初から、彼を負傷させた犯人として操真晴人に憤り、今なお恨んでいて、ゆえに操真晴人が篠崎和也に近付くことをさえも許そうとはしていない。操真晴人に対する怒りは篠崎和也にもあるが、その思いは違っていた。彼にとって操真晴人は同じ夢を共有して一緒に頑張っていた最高のライヴァルであり友であって、そうであるにもかかわらず急に夢を捨てて己の前から黙って消えてしまったことに対して彼は憤っていたのだ。
しかるに直美は、操真晴人が篠崎和也の前から黙って消え去った原因の一つが、操真晴人に対する自身の手厳しい非難にあると考えてはいないのだろうか。もちろん操真晴人は直美から攻撃されなくとも自ら身を退いたには相違ないが、直美自身が己の責任を感じていることは大いに考えられる。篠崎和也を真に怒らせているのは、操真晴人であるよりはむしろ操真晴人への己の怒りではないのか?と自覚できているなら、そのことがさらに直美を苛立たせているとも考えられる。
それに、操真晴人と篠崎和也との関係は同じ夢を抱くライヴァルの関係であり、それはどう頑張っても直美の入り込めない聖域であるから、直美が操真晴人に対して嫉妬しているということも充分に考えられる。直美は現在、篠崎和也のサッカー復帰に向けて練習を介助しているが、それは少しでもライヴァルのような立場に近付きたいという思いに動かされた行為であるのかもしれない。
仁藤攻介(永瀬匡)は操真晴人の現在のライヴァルとして、かつてのライヴァルだった篠崎和也から、操真晴人の過去について話を聴きたがった。普段は「みなまで云うな」と云う彼が今回ばかりは「皆まで聴きたい」と主張した。
他方、ファントム陣営ではソラ(前山剛久)がワイズマン(声:古川登志夫)に対して疑問を抱いていた。ワイズマンはファントムの増加を望んでいるが、ソラはその必要性を理解できないと感じていた。そこで彼は試しにメデューサ中山絵梨奈)に意見を求めてみたが、全て悟っているかのように偉そうに振る舞っているメデューサも実際にはワイズマンの命令に従って行動しているだけで、その行動にどんな意味があるかを考えようともしてはいなかった。そんなメデューサを無視して一人で思案していたソラは、ついに、ワイズマンの目的がファントムを増やすことではなく、ファントムを生み出す行為それ自体にあるのかもしれないと考えるに至った。
ソラは案外、視聴者と一緒に考えて、視聴者のために物語の謎を解明してゆく案内役でもあるのだろうか。