仮面ライダーウィザード第三十九話

平成「仮面ライダー」第十四作「仮面ライダーウィザード」。
第三十九話「ピッチの忘れ物」。
ウィザード=操真晴人(白石隼也)はビースト=仁藤攻介(永瀬匡)と共闘してでもなお全く勝てそうにはなかった強敵、勝村ファントム(佳本周也)との決戦に、インフィニティ様式の力で打ち勝った。
その力をもっと早く使っておけば事件は早く解決できたのに…と思う反面、あまりにも早く解決できてしまっていた場合、操真晴人に対する篠崎和也(岸田タツヤ)の真の思いを知るための時間が、操真晴人には与えられなかったのかもしれないとも思う。二人だけの時間を作るための機会を作り出したのは仁藤攻介だったが、事件がもっと早く解決できていた場合にはそれも不可能だったろう。
仁藤攻介は篠崎和也に操真晴人の居場所を訊かれたとき「あんたの傍にいると、またあの女がうるせえからな」と笑ったが、その煩い女、篠崎和也の恋人の直美(大谷澪)が操真晴人を敵視し続けていた理由は結局(先週ここに書いたように)、篠崎和也の操真晴人への思いが夢を共有するライヴァルへの愛であり、それは恋を超えた思いである以上、恋人でしかない直美には操真晴人に勝ち目がないという厳粛な事実に対して苛立っていたということにあったようにしか見えなかった。この解決できそうもない怒りが一体どのように解消されたのかは劇中には描かれなかった。大門凜子(高山侑子)と奈良瞬平(戸塚純貴)が説得を試みていたが、描かれた範囲では、直美の強烈な苛立ちを解消し得る程の説得力は伝わって来なかった。
問題は、戦闘の完了のあと操真晴人が篠崎和也の方へ振り返ることがなく、篠崎和也も操真晴人に駆け寄ることがなかった点にある。どうしてそうなったかは一目瞭然。新たな魔宝石の指輪が操真晴人に届けられたかと思えば、それを笛木という人物(池田成志)が横取りして、何事かと見れば彼は別の指輪を取り出し、変身して「白い魔法使い」の姿を表した…という唐突な出来事があったからだ。戦闘の間、篠崎和也は自身こそがファントムの標的であることを忘れたのか至近距離から一部始終を見詰め続け、操真晴人の躍進を見ては笑み、苦戦を見ては顔を曇らせていた。戦況の変化に応じた彼の表情の微妙な変化は画中に繰り返し表されたが、戦闘のあとの、謎の人物が変身するに至る謎の展開に対してはどのような表情を浮かべていたのか、全く描かれなかった。