仮面ライダーウィザード第四十九話

平成「仮面ライダー」第十四作「仮面ライダーウィザード」。
第四十九話「サバトの始まり」。
白い魔法使い=笛木奏(池田成志)はサバトを始めた。
前回のサバトで幸運にも予想外に生まれた奇跡の魔法使い、ウィザード=操真晴人(白石隼也)と、今回のサバトのために生み出して育成してきた新型の魔法使いであるメイジ一号=稲森真由(中山絵梨奈)、メイジ二号=飯島譲(相馬眞大)、メイジ三号=山本昌宏(川口真五)の三名とを合わせた合計四名の魔法使いを「人柱」として立てて東京全体を巨大な魔法陣に取り込んだ。四名の魔力で日食を起こし、日食の力で東京中のゲートから魔力を奪い去って、その全てを魔法陣の中心に置かれたコヨミ(奥仲麻琴)の身体に注ごうとした。亡くなった笛木暦(奥仲麻琴)を復活させるための儀式に他ならない。
東京中の人々の内、ゲートである者は魔力を奪われて生命を失って憐れなファントムと化し、ゲートではない者は殺害される。何れにしても東京中の人々が殺害される。笛木奏は己の娘一人のために東京中の人間を皆殺しにしようとしていたわけだが、そのことについて彼が心を痛める様子は皆無だった。それどころか、娘一人のために大勢の他人を犠牲にすることを当然であるとさえ思っているようだった。
それだけではない。笛木奏はコヨミを「暦の姿をした人形」と呼んだ。操真晴人はコヨミを守りたいと思っているが、笛木奏は笛木暦を甦らせるためにコヨミをも犠牲にしようとしていたと云えなくもない。
事態を打開し得る可能性を秘めていたのは唯一、笛木奏とは何の関係もない「古の魔法使い」、ビースト=仁藤攻介(永瀬匡)だけだった。彼は魔法陣の中心に駆け付け、白い魔法使いに戦いを挑んだが、もともと魔力の差は歴然。ビーストがどう頑張っても勝ち目はなかった。無残にも倒されようとした瞬間、仁藤攻介は胸中に宿る古代の神獣、キマイラに呼びかけた。外の世界に発生した巨大な魔力を存分に食べに行け!と。キマイラを身体の外へ解放する力は彼にはないはずだったし、仮にそんなことをしようものなら彼の身に何が起こるか判らなかったが、「ピンチはチャンス」を信条とする彼は「わかんねえ方がおもしれえじゃねえか。どうせ終わるんだったら、面白く終わりてえ。」と笑んだ。彼の胸中のこの遣り取りは一瞬の出来事だったろう。胸中のキマイラとの会話を終えた彼は、その瞬間、白い魔法使いから止めを刺されようとしていたが、直ぐに目を覚まして白い魔法使いの武器を受け止め、「おまえにとっちゃ古臭い魔法かもしれねえ。だが、その古の力がおまえを倒す!」と告げて反撃して武器を奪い、それで自らの変身ベルトを破壊した。この気概に応えて、キマイラは彼の身体から飛び出して、東京の上空を舞い、巨大な魔力を悉く食べ尽くした。日食を生じていた魔力は全て消費され、サバトは中断された。人々は救われた。
キマイラは仁藤攻介の徳と勇気を称え、彼の心身を解放した。仁藤攻介は空腹のキマイラに食べられる恐怖からは永遠に解放されたが、同時に、ビーストに変身して戦う能力をも失った。
サバトを中断させられた白い魔法使いは、「古臭い魔法」に敗れたことを悔しがりつつ、もはや変身できなくなった仁藤攻介を前に、「許さんぞ!絶対に!」と怒り、「恐怖に怯えながら、絶望して死ぬがよい!」と云って武器を向けたが、仁藤攻介は「絶望なんかしねえよ。まだ希望はある」と応じた。そこには正気を取り戻したらしい操真晴人が現れていたのだ。今週の話で唯一の、操真晴人の見せ場だった。
今週の話を見る限り、この物語の名は「仮面ライダービースト」で、主人公は仁藤攻介だったと云われても肯くしかない程だった。
ところで、白い魔法使い=ワイズマン=笛木奏の悪事を阻止したのは仁藤攻介だったが、そのための手がかりを提供したのはソラ(前山剛久)だった。ソラの前身の人間「滝川空」は連続快楽殺人犯であり、紛れもなく極悪人だが、ファントム=グレムリンとしてのソラは、ファントムの首領になっていたワイズマンにも全く屈従せず、ワイズマンに利用されていただけのウィザードからは距離を取りつつも、必要に応じて友好関係にも転じてきた。この奇妙な中立の立場はどのように解消されるのだろうか。