スターマン第十話=最終回

ドラマ「スターマン -この星の恋」。第十話=最終回。
富士山の麓の、広くて小さな町の、山の中の洒落た一軒家の、祖母と母と三兄弟の三世代が同居している宇野家に、新たな若い「パパ」として迎えられた「宇宙から来た王子様」、星男(福士蒼汰)は、同じ星から同じ町へ漂着した重田信三(國村隼)と同じく、特殊な能力を有しているが、中でも大きな力として、病や怪我で苦しんでいる人を完全に治癒して回復させる能力を有している。しかるに、この力に関して彼は重田重三から忠告を受けていた。この能力を過度に使用すれば身体への打撃も少なくなく、寿命を短くしかねない程であるというのだ。星男を家族として迎えた宇野佐和子(広末涼子)もまた、重田信三(國村隼)を四十年前に家族とした「古女房」(角替和枝)から同じ忠告を受けていた。
これは、誰もが悲劇を予想せざるを得なくなる重要な設定であり、その予想の通り、今宵の話は悲劇の結末を予想させる方向へ展開した。
しかし予想は見事にはぐらかされた。病や怪我を払い除ける星男の能力は、確かに星男に多大の打撃を与えたが、それは寿命を短くするというような大袈裟なことではなく、単に体力を著しく消耗させるということだったらしい。もちろん急激で過度な体力の消耗が健康に望ましいはずはなく、星男が病や怪我に悩まされている場合や老いた場合には深刻な悪影響を生じるのかもしれないが、星男は今のところは若く健康であるから回復も早く、今回も、暫し寝て体を休めただけで完全に回復できた。
野球場の階段式の観客席で転倒して転がり落ちて体を痛めた宇野佐和子を治癒した直後に星男が疲労で倒れたのは、彼自身が先に同じ場所を転がり落ちて体を痛めていたからであるのに加えて、宇野佐和子が星男との子を身ごもっていたことから、二人分の身体を治癒しなければならなかったからに他ならない。
重田夫妻の忠告が余りにも大袈裟で人騒がせだったということに尽きる。
しかし星男が目を覚まそうとしたとき、宇野佐和子が長男の宇野大(大西流星)や次男の宇野秀(黒田博之)とともに泣いていた中で一人、まだ幼い三男の宇野俊(五十嵐陽向)だけが、重田重三や須田節(小池栄子)とともに異変に気付いた場面は面白かった。
体力を回復して目を覚ましたものの、何が起こっているのか判らず驚いている様子の星男に、重田重三は何時もの声を発しない会話で急ぎ事情を説明し、どうしてよいか困った星男は慌てて再び寝たフリを始めたが、須田節は星男の無事に気付いて重田重三を責めるような顔で見詰め、宇野瞬は無邪気に(しかし、実のところは誰よりも冷静に)星男の体の上にまたがって「パパ、起きて!起きて!」と声をかけた。母の宇野佐和子は宇野俊のこの声を、事情を理解し切れていない無邪気な子の健気な声であると聴いたのか、泣き声をさらに大きくしたが、実は本当に事態を理解できていたのは宇野俊の方だったのだ。
臼井祥子(有村架純)の奇妙な物語も決着した。かねて宇宙から迎えが来ることを待望していた臼井祥子は、実は自身が十五年前に地球へ漂着した人間だったことを知るに至り(第八話)、そして遂に待望の迎えが来て(第九話)、今回の冒頭、無事に地球を去った。故郷の星へ帰ったらしい。安藤くん(山田裕貴)は嘆きつつ、いつかは臼井祥子の住んでいる星へ行きたいと願望し始めた。それから二年後、宇宙飛行士になりたいのか早朝に走って体を鍛えていた彼は、遠い星の祥子から「一応、待ってますね」という連絡を受信し、喜んだ。この連絡には「三万光年かかるけどね」という恐ろしい続きがあったのだが、安藤くんは気付いていなかった。
臼井祥子は安藤くんをからかっているのか?と考えるに、多分そうではない。臼井祥子が安藤くんからの求愛を拒み続けていたのは、宇宙から運命の人が迎えに来てくれるはずであると信じていたからだった。そして迎えが来て、故郷の星へ帰ったにもかかわらず、安藤くんに「待ってますね」と連絡を寄越したということは、宇宙に運命の人なんかいなかったということではないのか。多分、安藤くん以上の男なんかいなかったのだ。そもそも地球人である安藤くんは臼井祥子から見れば宇宙人そのものであり、異星から地球へ来た臼井祥子にとっては安藤くんこそが運命の宇宙人だったということだろう。凄い真相だが、失ったあとにしか発見できなかったのだ。
ここまでの救いようもない悲劇に終わる前に、身近な幸福を発見しようとしているのが須田節で、佐竹幸平(KENCHI)の恋は漸く実ろうとしていた。ところで、重田家の朝食の場面をよく見てみると、重田重三の孫の重田たけし(佐藤涼平)はどういうわけか宝冠を頭に戴いていた。高貴とか品格とかいうこととは全く無縁に見える重田家の大家族の中で唯一人、丁寧で上品な言動を見せる重田たけし。一体どのような子供であるのだろうか?という疑問は、解消されるはずもなく最終話が結ばれた。
ともかくも最終回を終えたところで、仮面ライダーフォーゼで主演をつとめた福士蒼汰の今後については引き続き注目したいが、もう一人、福士蒼汰が番組公式サイト内のインタヴュウで「“姉がいて、自分は末っ子”という家族構成が似てる部分もあって、なんとなく気持ちがわかるな、というか、どこか僕と似ている部分があります」と述べた大西流星(関西ジャニーズJr.)の今後にも注目しよう。