仮面ライダーウィザード第五十三話=最終回

平成「仮面ライダー」第十四作「仮面ライダーウィザード」。
第五十三話=最終回「終わらない物語」。
先週と今週の二話にわたった特別編(番外編)は、仮面ライダー物語の基本をあらためて振り返ることで、ウィザード物語を仮面ライダー物語の一として意義付けたと見ることができる。一般に仮面ライダーは(例外はあるにしても大概は)悪の力によって生み出されながら悪の道から外れ、悪の力によって与えられた力を善のために利用して人々を守る。ゆえに正義の味方ではあるが、生まれながらの正義ではない。悪になり損なったようなものでもあり、そこに苦悩もあり得るが、苦悩の存在は自由の存在を表している。悪の力によって生み出されたことは決して変えることのできない運命ではないことが信じられているからに他ならない。
黄色の魔法石の中に封印された世界は、現実世界から追放され消去された怪物たちの楽園であるが、そこにはそれらの怪物たちを倒した過去の十三代の仮面ライダーも指輪に結晶した形で封印されていた。「この世界の主」のアマダム(田口トモロヲ)は魔法を悪のために用いて堕落した魔法使いだったらしい。
彼はウィザード=操真晴人(白石隼也)を含めた十四の仮面ライダーを、怪物のなり損ないと嘲笑したが、もちろん怪物のなり損ないではない。いつでも自由な旅人であり続ける「通りすがり」の仮面ライダーディケイド=門矢士(井上正大)が宣言したように、たとえ怪物の力によって生み出されようとも、そのまま怪物として生きる運命に隷従することを拒否し、人間の自由を守るために怪物の力を借りて戦うことを、自由な意思において選び、それを貫いた者であるからだ。
少女「コヨミ」(SALA)とともに怪物になりかけていた謎の少年(竜跳)は、「コヨミ」を守るため、そして「コヨミ」とともに怪物になるのを拒否するため、黄色の魔法石の内の世界から逃亡しようと企てていたが、ついには、怪物になろうとする己の力を自身の意志によって抑え付け、克服して、怪物にはならない自由を得ると同時に「コヨミ」を守る道を知った。善も正義もあり得ない怪物の世界では正義を守ることはできないが、自由を守ることはできたのだ。少年の名は無論、「ハルト」だった。
同じように、ウィザード=操真晴人は、もともとは白い魔法使い=ワイズマン=笛木奏(池田成志)の狂気の計画のために生み出され、邪悪な目的を達成するための手段として働かされていたと判明したが、その過程においても少なくとも彼自身は、目的も手段も知らなかったというよりも自由な意思に基づいて、人々の絶望を希望に変える「最後の希望」として生きてゆくことを選び、実行し続けてきた。この時点で既にウィザード=操真晴人は、白い魔法使いの手先の「指輪の魔法使い」であることを脱却して仮面ライダーになっていたようなものであり、彼の流した涙から生じた彼独自の、透明の魔法石「インフィニティ」はその結晶だった。
なお、今回も仁藤攻介(永瀬匡)は仮面ライダービーストに変身する前の生身の身体のままで勇ましく強く存分に戦った。それでも奮戦空しくアマダムに倒され、彼は盟友の操真晴人に「希望」を託しつつ消滅したが、あのあと一体どのようにして復活し、現実世界へ帰還したのだろうか。彼が復活しないことには(第五十話で描かれた通り)ウィザード物語は解決し完結し得ないのだ。