旅行記一/国立新美術館の点描の画家たち展/日展

旅行記一。
休日だが、明日の出張に備えて移動しておく日。やや早めに起きて、朝八時四十分頃に出立し、松山空港へ急ぎ、九時四十分に発って十一時頃に羽田空港へ到着。東京モノレールに乗り、浜松町へ移動し、山手線へ乗り換えて上野駅へ。昼十二時には上野駅に近いホテルへ入った。駅にある料理店で昼食を摂ったあと、上野駅から西日暮里駅を経て乃木坂駅へ行き、一時五十分、六本木の国立新美術館に到着。
国立新美術館で今月二十三日まで開催されている展覧会「クレラー=ミュラー美術館所蔵作品を中心に 印象派を超えて-点描の画家たち ゴッホ、スーラからモンドリアンまで」を鑑賞。点描という手法に注目することで、写実を極めた先に抽象にまで達した近代絵画史の論理をドラマティクにたどる面白い展覧会だが、見ていて最も心惹かれたのは、やはりゴッホの作品群。場内で注目を集めていたのは《種まく人》だが、その隣に並んでいる《麦束のある月の出の風景》も、波打つような色彩の配列が心地よく、実に見応えがあった。
三時五十分頃に展覧会場を出て、次いで日展を見物しようとしたところ、受付の親切な人から、四時からは「トワイライト・タイム」と銘打ち、入場料千二百円を三百円に下げるので十分間だけ待ってみてはどうかと勧められた。実に親切な話。ありがたく助言に従い、十分後に戻ってきて日展の会場へ入った。昭和の中期に行われた改組から数えて第四十五回。今月八日までの開催。入って直ぐに写真撮影の許可を頂戴し、デジタル一眼カメラを準備して会場を回った。閉館時間が六時であるから制限時間が二時間しかなかった中、何とか頑張って、一階から二階まで続く日本画と洋画の会場を一周し、工芸をあきらめて彫刻の会場までは一周できた。
日本画の会場に入って間もなく、特選を受賞した伊東正次の作品あり。愛媛県久万高原町出身の人。洋画部門でも、特選に輝いた《懐郷》の渡邊裕公が愛媛県の人であるらしい。
洋画部門に三好杏奈《爽秋》あり。愛媛県在住の人。想うに、愛媛県展や愛媛県高等学校総合文化祭美術展等にも蘇鉄の絵を出品していた人ではないだろうか。一目で判る個性があり、前々から良い絵を描く人であると目を着けていたのだが、早くも日展に入選していたのか。驚いた。
彫刻部門で最も魅了されたのは桑原秀栄《挑む人》。颯爽とした青年像で、体型も完璧。顔立ちも優美。金剛力士像のような動作が生じる身体のフォルムも流麗。青年の理想像として完成度が高い。これを見ることができて実に良かった。東誠《夢路》には彫刻離れした浮遊感があって楽しめた。高野眞吾《The Seeker―探求者》は逆立ちをする強靭な身体の像。会場では背面を主に見せるように配置されていて、確かに背後から見る脚も尻も背中も見応えがあったが、側面から見ると、弓なりに力強く伸び上がる美しいフォルムと、真剣な厳しい表情の甘い顔があり、さらに前面へ回ると、難しい姿勢を支えている胴体の筋肉の、静けさの中の最強度の緊張が表現されていて圧倒された。阿部鉄太郎《黒潮》、藤原健太郎《見つめる》、牧田法子《Torso.7》等も良い体型を見せていた。
存分に鑑賞する余裕もないまま閉館時間の夕方六時を迎え、仕方なく速やかに国立新美術館を退出。乃木坂駅から国会議事堂前駅溜池山王駅を経て上野駅へ。駅を出たところにあった食堂で夕食を摂って、夜八時にはホテルへ帰った。