水球ヤンキース第五話

土ドラ「水球ヤンキース」第五話。
稲葉尚弥(中島裕翔)率いる霞野工業高等学校水球部が水蘭高等学校水球部との練習試合に臨んだことで生じた異変と、その解決を描いた一話。霞野工業高等学校水球部が練習試合で敗れたのは、単に水蘭高等学校水球部が強豪だったからではなく、むしろ水蘭高等学校水球部が卑怯だったからでもあるように見えた。なぜなら彼等は最初は霞野工業高等学校水球部を甘く見て、女子部員で迎撃しようとしていたところ、敵の意外な強さに直面し、負けそうになっていたのを受けて急に男子部員を出してきたからだ。霞野工業高等学校水球部が流石に疲れてきていたところへ未だ全く疲れていない水蘭高等学校水球部の男子部員と対戦させたわけで、卑怯であるとしか云いようがない。
しかも霞野工業高等学校水球部の顧問教諭の青山千春(大政絢)からの依頼に応じて水蘭高等学校水球部の顧問教諭の庄司真冬(倉科カナ)がこの練習試合を引き受けた理由は、敵側の選手の力量、ことに三船龍二山崎賢人)の才能の品定めにこそあった。今回の彼の活躍を見て庄司真冬は彼を引き抜くべく画策し始めた。
この策略が進行していた間、稲葉尚弥は己の力が及ばなかったことに一人で落ち込んでいたが、やがて立ち直り、水球部の皆を集めて盛大な料理で慰労し、激励し、結束を固めた。そうして霞野工業高等学校水球部が再出発しようとした直後に、三船龍二の裏切りが発覚した。
本当に裏切ったのかどうかは次週の第六話で明かされるに相違ないが、話が上手くまとまるのだろうか。この種のテレヴィドラマではどういうわけか仲間の裏切りを出してくることが多く、恐らくは話を盛り上げるための事件としてそれが有効であると考えている制作者が多いのだろうが、少々安直で稚拙で、しかも不道徳ではないだろうか。仲間を裏切った者を再び何事もなかったかのように心から信頼することは本当に可能であるのかを、常識に照らして見つめ直してみて欲しいものであると思わざるを得ない。
そうした中で木村朋生(千葉雄大)、志村公平(中川大志)、加東慎介(吉沢亮)の三人組の言行には救われた。稲葉尚弥が居候している神社の境内の岩崎家の居間に皆で集まって慰労会をしたあとの、三船龍二に喧嘩を売った千秋亮(間宮祥太朗)に対して、志村公平が三船龍二を庇うため喧嘩を買い、あっさり撃退されたのを受けて次には加東慎介が立ち上がったからだ。無益な喧嘩ではあっても、志村公平の三船龍二への篤い情と、加東慎介の志村公平への連帯の情が窺えて、ここには裏切りの正反対の心があった。次週の展開にも、このような清澄な熱血の表現を待望したい。