平成仮面ライダー論の書

夜、貸してもらっている書籍『語ろう!クウガ アギト 龍騎』(二〇一三年)を一気に読み終えた。
同書の編集の方針は、仮面ライダーに詳しい数人の識者たちに、あくまでも「ファン」の立場から仮面ライダーについて大いに語ってもらうというところにあるが、一読した限り最も興味深かったのは、制作の現場に最も深く関与してきた脚本家である井上敏樹の、脚本の職人としての発言であるように思われた。
ゲームやアニメの脚本家として活躍し、やがて仮面ライダーにおいても賛否両論ある問題作を書くことになった虚淵玄の言も興味深かったが、これは当時としては一人の「ファン」の立場からの言ということになるのかもしれないが、脚本の玄人としての言でもあるし、何よりも、既に新作「鎧武」の構想を産出しつつあった時期の、当事者としての言でもあると云える。というわけで、結局、識者による「ファン」の立場からの話を聞くという編集の意図は、必ずしも成功していない気がする。しかし面白かったのは間違いない。
壮大で複雑な「アギト」の物語を作り出した井上敏樹が、実はその構想を最初から築いていたわけでもなく、流れの中で徐々に積み上げただけだった…というのは、無責任にも聞こえる話で意外ではあるが、案外、現場の職人技をよく伝えていて、いかにも納得ゆく説明でもある。
高寺成紀の語る「クウガ」の現場の様子と、井上敏樹の語る「クウガ」の現場における高寺成紀の様子との間に深刻な矛盾が生じているのも、のちの「響鬼」騒動を予告するかのようで、実に興味深かった。