仮面ライダードライブ第二十八話

平成仮面ライダー第十六作「仮面ライダードライブ」。
第二十八話「なぜ家族は狙われたのか」。
警視庁特状課巡査の泊進ノ介(竹内涼真)は謹慎を命じられ、それに伴ってドライブへの変身も禁じられていたが、それを解除させるため皆で一芝居を打った。今や特状課の一員と化している警視庁捜査一課の警部補、追田現八郎(井俣太良)こそ入院中で不在だったが、チェイス上遠野太洸)に多大の協力を得て、特状課長の本願寺純(片岡鶴太郎)をはじめ、全員で捜査一課長の仁良光秀(飯田基祐)を追い詰めた。実のところ仮面ライダーの活躍なくして「機械生命体犯罪」の解決なんかあり得ないのに、仮面ライダーに謹慎を命じるというのはどう考えても警察が自らを追い詰めることでしかない。自殺行為と云ってよい。その構図を仁良光秀に身を以て思い知らせる芝居だった。まるで歌舞伎のような芝居の中で、沢神りんな(吉井怜)が頭を振り回して髪を振り乱していたのは、連獅子か何かを意識していたのだろうか。
対するに、ロイミュード陣営も芝居を打っていた。標的はマッハ=詩島剛(稲葉友)。仕掛けたのは無論、ロイミュード001、国家防衛局長官の真影壮一(堀内正美)。その手足として、ロイミュード050とともに相馬頼子(はねゆり)を利用していた。行方不明になっていた相馬良(後藤崇太)の姉を自称していた相馬頼子の本名は西堀令子。その父は、かつてプロトドライブ=チェイスによって倒されたロイミュード005の原型であると同時に、泊進ノ介によって逮捕された犯罪者でもある犯罪心理学者の西堀光也。西堀令子の願望は、父の犯罪を超える完全犯罪をなし遂げることにあり、そのために、詩島剛の心の闇を増幅させ、己を狙わせた。ロイミュード050との融合進化体である己がマッハによって倒されたとき、倒したマッハ=詩島剛は殺人者になる。父である蛮野天十郎ロイミュードを発明したことについて罪の意識を抱き、この罪を早く滅ぼすため一刻も早くロイミュードを殲滅したいと熱望している詩島剛に、彼と酷似した境遇の人間を殺害させること。それが西堀令子の狙いであり、それを支援することによって彼の目的を見失わせ、居場所を失わせて迷走させ、仮面ライダーに敵対する仮面ライダーに仕立てることが真影壮一の狙いだった。
ロイミュード003=ブレン(松島庄汰)が真影壮一の計略に巻き込まれ、手先として利用されようとしているのに対し、抵抗感を抱いている様子であるのはロイミュード002=ハート(蕨野友也)と、ロイミュード009=メディック(馬場ふみか)。しかし抵抗感の意味は違っている。メディックは己の意のままに物事を進めることができなくなってきたことに不快感を抱いているに過ぎないように見受ける。
他方、ハートは、ロイミュード001の考えを充分に理解した上で、それが己の取るべき道ではないと考えているように見える。なにしろハートはマッハ=詩島剛の父が蛮野天十郎であることを既に知っていたのだ。かつてブレンがドライブ陣営の人々の情報を収集して把握して利用してはどうかと提案したとき、ハートはその必要がないことを瞬時に告げて、ブレンを失望させたことがある。しかるに、あのときハートは、未知の情報の価値に気付かなかったのではなく、むしろ既に把握していて、ブレンの作戦の意義も理解した上で、それでもなお、そのような姑息な方法に価値を認めなかったのではなかったろうか。