旅行記/忽那諸島の中島の大浦
休日。昼に外出。道後温泉駅から市内電車で大手町へ行き、郊外電車で高浜駅へ。駅の直ぐ前には高浜港。一時十五分発のフェリーに乗船して大浦港へ向かった。目的地は松山市中島総合文化センター展示室。先々月のことだったか、当地の有力者の書斎へ招かれた際、そこの壁面には二神司朗の手になる少年像の美しい素描があって興味を抱き、インターネット上に検索してみたところ、中島の総合文化センターに展示されている由の少々古い情報があったので、必ずしも常設展示されているわけではないのかもしれないとも恐れながらも、兎も角も現地を訪ねてみることにした次第。船中で昼食にアンパンでも食べようかと思ったが、生憎、家から持参するのを忘れていた。ウォークマンで「妖怪ウォッチ」音楽を聴いている内に、一時五十五分、大浦港へ到着。
地図の類を確認しておかなかったので、どこに何があるのか把握できていなかったが、駅前から山の方へ延びる大きな道路を歩いてみたところ、商店や学校の彼方に総合文化センターがあった。実に立派な建物。坂本冬美来島の小さな記念柱(木造)があった。玄関前には林立する太い柱で支えられた空間があって、晴天下の青空や緑色の山に調和し、まるで神殿のようだった。広々とした玄関ホールの奥に洗面所。左手に劇場があり、右手には図書館。図書館の脇に展示室があったが、残念ながら何も展示されていなかった。せめてチラシか何か資料の配布でもないものかと思いながら、取り敢えず図書館の司書氏に尋ねてみれば、別の職員氏を紹介してもらえて、同氏から親切に説明を受けた。予想外の親切に感謝。二神司朗画集をここで販売していることも教えてもらえたので、もちろん購入した。立派な造で、図版も多数、解説者も有名な美術評論家であるのに、わずか二千円(税込)。良い買物ができた。
館内には中島を中心とする忽那諸島についての説明があり、それによると、二神島は古来の自然環境と生活文化を色濃く残した「パラダイス」として海外にも知られているらしい。なるほど、大昔は島の主だった二神家の嫡流である二神司朗も、美しい海辺で遊び、学び、働く少年たちの姿に、神話の世界の住人たちを見出していたのだろうか。
満足して大浦港へ戻ったのは三時頃。時刻表を見てみれば、高浜行の船の出発時刻は、二時十分の次は五時五分。なるほど二時間も待たなければならないのか…と少々落ち込んでいたところ、港内アナウンスあり、駅前に停車している島内一周のバスが神浦港を経由すること、神浦港に着く時刻には松山行のフェリーが着くことが告げられた。驚いて港の券売所の方に尋ねてみたところ、神浦港へ行ってその船に乗れば早く松山へ帰り得ることを教えてくれたので、大急ぎバスに飛び乗った。バスの窓からは、立派な八幡宮の鎮守の森や、青く美しい海を見ることができた。無事、三時二十分頃に神浦港で降車。運賃二百円。そして既に到着していたフェリーに乗車して、間もなく、三時二十四分に出航。夕方四時十三分に高浜港へ到着し、高浜駅へ急いだが、生憎、停車していた郊外電車には乗ることができなかった。仕方ないので売店でオニギリを一つ買って次の便を待ち、到着した電車に乗って松山市駅まで移動。銀天街、大街道を歩いて平和通へ出て、大工道具店で下敷を買い、道後まで歩いて、大型食料品店に寄って帰宅。