仮面ライダードライブ第三十四話

平成仮面ライダー第十六作「仮面ライダードライブ」。
第三十四話「だれが泊英介の命を奪ったのか」。
急展開があったが、概ね前回の時点で予測できていた展開でもあり、違和感は全くなかった。
しかも今回、科学捜査研究所、通称「科捜研」が登場。東映といえば時代劇と刑事ドラマ。東映の刑事ドラマといえば「科捜研の女」。科捜研の女は三ノ輪麻里子(野口聖古)。いつもドラヤキを食べていた。
ところで。
ドライブに変身し得る警視庁特状課巡査の泊進ノ介(竹内涼真)の亡き父、泊英介を十二年前に殺害した真犯人は、今や警視庁捜査一課長にまで成り上がった仁良光秀(飯田基祐)だった。そこは予想通りだったが、意外だったのは彼が既にロイミュードとの融合までも果たしていたこと。
しかし多分、第三十三話の時点では未だロイミュードと融合してはいなかったのだろう。蛮野天十郎(声:森田成一)の頭脳を保全する蛮野パッドをその子息のマッハ=詩島剛(稲葉友)に奪取された上、頼みの綱のロイミュード001=フリーズ=真影壮一(堀内正美)をドライブによって退治されてしまって危機に陥ったロイミュード003=ブレン(松島庄汰)が、苦肉の策で、ロイミュード106の力を仁良光秀に貸し出して、後始末をさせることにしたに違いない。
泥棒ロイミュードと化した仁良光秀が実行するのは、相変わらず、己の十二年前の犯罪の隠蔽だが、これはブレンにとっても無益ではないのだろう。なぜなら仁良光秀が警視庁捜査一課長として特状課を圧し得る立場にいる限り、真影壮一がいなくなった今でも、ブレンの立場は辛うじて安泰であるから。
とはいえ、十二年前の事件の証拠を泥棒すべく警視庁の庁舎内にある科学捜査研究所で騒ぎを起こした結果、却って足跡を残してしまい、仁良光秀も遂に、泊進ノ介と特状課長の本願寺純(片岡鶴太郎)によって罪を暴かれた。
本来ここで彼の人生も終わるべきだったが、十二年前の犯行の動機として、同期の花形だった泊英介に対する嫉妬の強さを語った瞬間、ブレンの態度が一変した。ブレンにとって仁良光秀は、もはや単なる道具ではなく、超進化態に到達するための糧になった。これが今回の最大の急展開だったが、前回までに予想できていて、ゆえに自然な、必然の展開でもあった。
それにしても奇妙だったのは、フリーズの消滅に伴って、今まで凍結されていた人々の記憶が徐々に解凍されようとしている事態に関して仁良光秀と本願寺純が述べていたことについて、誰も違和感を表さなかった点。両名は予て被害者を訪ねて記憶の凍結を解くための「解毒剤」を配布していたらしいが、今回の事態が生じたことで、「追い付かない」状態になったらしい。奇妙な話ではないか。なぜなら「解毒剤」をわざわざ配布して回らなくとも、自ずから解凍されるのであるから。それは望ましい事態であるとしか思えない。何を落ち込んでいたのか。
注意深く見るなら、「追い付かない」とか「火消しに必死」とか取り乱していたのはもちろん仁良光秀一人だけで、実は本願寺純は事実関係しか述べていない。警視庁と政府の関係者の中で真影壮一に関係していた人物を訪ね、「解毒剤」を与えて回っていたところ、もはや「解毒剤」を要しなくなってきているという事実を述べていただけ。そのことは、科学捜査研究所における誘拐強盗事件の被害者である同研究所物理科長の重田静夫(五王四郎)も記憶を取り戻しつつあったに相違ないと推察されることの傍証になり得る。本願寺純が落ち込んでいたのは、記憶を取り戻しつつあった結果として十二年前の事件を調べ直そうとしていた良心ある人物が、あらためて証拠隠滅を図る真犯人によって誘拐されてしまったのかもしれないと推察されたからだろう。同時に、明らかに取り乱し始めている仁良光秀を「泳がせる」意図もあったろう。
今回もチェイス上遠野太洸)が大活躍。仁良光秀の陰謀によって泊進ノ介がロイミュード002=ハート(蕨野友也)に決闘を申し込まれて足止めをされ、ロイミュード009=メディック(馬場ふみか)にけしかけられたブレンが詩島霧子(内田理央)を襲撃したところへ颯爽と現れたチェイスは、ブレンを退け、泊進ノ介に捜査へ戻るように導いた。詩島剛を気にかけながらも心配は無用であることを詩島霧子に告げていて、今やドライブ陣営の指導者のようでさえある。