旅行記一/岡山市立オリエント美術館/林原美術館

旅行記一。
三連休の初日。起きたのは朝六時前だったろうか。昨夜中に概ね旅行の準備を済ませてはいたが、今日の朝に出立するのか、それとも昼にでも出立するのかを決めかねていた。なぜなら今日の午後、松山祭の堀之内会場では「妖怪ウォッチ」キャラクターショーが挙行される由で、それを見てから行くべきかどうか悩んでいたから。朝から出かけるべく決意したのは朝食後の八時頃だったろうか。
船で行こうか、それともJRで行こうか悩みながら道後温泉駅へ行ってみれば、九時台には松山観光港行のバスが発着しないと判明したので、仕方なく市内電車でJR松山駅へ移動。九時台の特急列車は既に出たあとだったので、十時二十一分の便で出立。家から携えて来たパンと珈琲牛乳で昼食。午後一時十分に岡山駅へ到着。駅からも遠くはないホテルへ大きな荷物だけ預け、路面電車で城下まで移動。交差点の角の歩道上には幼児の裸体像あり、題名を見れば「ももたろう」と書いてあった。同一の作者によると思しい同種の像が街中の至る所にある。
昼一時三十三分頃、岡山市立オリエント美術館に到着。初めて来た。
今日ここに来たのは、九月六日まで開催中の展覧会「ギリシア考古学の父シュリーマン 初公開!ティリンス遺跡原画の全貌」を見るため。シュリーマンが遺跡の発掘に際して作成した報告書の図版の原図が日本の天理参考館に蔵されていたという事実に先ずは驚嘆したが、同館が古代ギリシアの陶器や小さな彫刻をも多く蔵していた事実にも驚いた。かなり見応えがあった。二階の所蔵品の展示も実に興味深かった。
展覧会「ギリシア考古学の父シュリーマン ティリンス遺跡原画の全貌」の図録は一般書籍として制作、販売、流通されている模様。確かギリシア壺絵の展覧会図録も同じようになっていた。この書籍と、過去の図録七冊を合わせて九千円分を購入して、三時三十分に美術館を出た。
地下道「しろちか」を通って交差点の反対側へ渡り、岡山城天守閣を遠望しながら進み、三時四十三分、林原美術館へ到着。久し振りに来た。
今日ここへ来たのは、九月二十三日まで開催中の展覧会「すべて魅せます 平家物語絵巻」を見るため。否、そもそも岡山へ来ることを考えたのが、これを見るために他ならない。
越前松平家伝来の名宝である江戸時代初期の「平家物語絵巻」の全三十六巻を並べて、平家物語の流れをたどりながら絵画表現上の見所をも明らかにする好企画。この絵巻は、物語の全文を載せた唯一の作例であるらしく、ゆえに詞書の部分が極めて長い。絵巻の全巻を広げるには途轍もなく広大な展示空間が必要になるが、今回の展覧会では、全三十六巻から各巻の名場面を選んで、解説文を添えている。七月十八日から八月二十三日までの間は「源平の争乱」と題して場面を選択しているが、八月二十五日以降は「悲運の女性・武将」と題して別の場面を選択する由。図録は今回の展覧会のために新たに制作されたのではなく、林原美術館蔵の名宝として「平家物語絵巻」を解説する所蔵品図録だが、絵巻中の絵画の全場面を収録しているようで、役に立つ。近々会う予定の人への土産物も兼ねて二冊購入。
夕方五時十分に美術館を出て、ホテルへ帰るべく歩いていた途上、「晴れの国おかやま館」という物産館の店頭に岡山産イグサを用いた草履(雪踏)が並んでいたので、今宵から実用すべく直ぐに購入。店内には「もんげー岡山」と書かれたポスターが貼ってあった。なるほど「妖怪ウォッチ」で大人気の神獣コマさん&コマじろう兄弟が驚いたときに発するあの語は岡山の用語だったのか。
ホテルに入り、買ったばかりの草履に履き替えて外出。周囲の繁華街を歩き回ったが、手頃な蕎麦屋も定食屋も見付けることができなかったので、久し振りに吉野家へ。七年振り位だろうか。いつの間にか品書が増えて品数が増えていて動揺した。迷走しているとしか思えなかった。コンヴィニエンス店で飲物を買い込んで夜七時四十分頃にホテルへ戻った。やがて眠くなったので寝て、起きたのは深夜十二時半頃。不図テレヴィを見れば、NHK「生命大躍進」を第一集から第三集まで一挙に再放送していたので不覚にも全て見て、八月九日午前三時七分に記之。