福士蒼汰ドラマ恋仲第七話

福士蒼汰主演テレヴィドラマ。月九「恋仲」。第七話。
主人公の三浦葵福士蒼汰)の職場の上司たちのような脇役集団は常識ある人々であるように見えるが、それは単に、物語の展開に殆ど何も影響を及ぼさない程の脇役でしかないからだろう…と思うことを先週ここに書いたが、なるほど、その通りだったようだ。物語の展開に影響を及ぼし始めるや、忽ち常識である人ではなくなってしまった。
問答無用で怒鳴るだけだった磯原新一(永井大)も酷いが、特に酷かったのは彼の勤務している建築設計事務所の経営者である丹羽万里子(吉田羊)。仕事で失敗した三浦葵に対して、さり気なく転職を勧めていた。このテレヴィドラマ制作者の意図としては、幼少から建築家になることを夢見てきたにもかかわらず油断していた彼にここで危機感を抱かせることで奮起を促そうとした上司の優しさ…か何かを描きたかったのか知らない。しかし普通に考えるなら、あのような転職の勧告は、会社側の都合による解雇や退職になることを避けて、社員側の都合による退職だったかのように偽装するための工作としか見えない。「あなたのためなのよ?」とか云いながら、退職金なんか支払いたくないという経営者の思いが見えてくるばかり。こんな酷い話を何の躊躇もなく描けてしまえるこのテレヴィドラマ制作者の思考が恐ろしい。
金沢公平(太賀)も相変わらず酷かった。眼前の三浦葵の苦悩の原因を作ったのが己であることに気付こうともせず、むしろ三浦葵を激励し得るのが己であるとでも思っている様子だった。
もちろん蒼井翔太野村周平)も金沢公平に負けない。芹沢あかり(本田翼)が、入院患者の少女である心音(大友花恋)に対して星野悠真(萩原利久)への想いに関して「後悔させたくない」と云い、心音も芹沢あかりに対して「後悔しないよう」と云ったが、両名の遣り取りを見ていた蒼井翔太は芹沢あかりに対して背後から抱き付きながら「俺も後悔したくない」と云った。芹沢あかりも心音も、相手に対して第三者の立場から思い遣っていたが、蒼井翔太だけは己の利益を主張していた。このテレヴィドラマ制作者には、両者の違いが見えていないのだろうか。
心音は、芹沢あかりが三浦葵と楽しそうにしている様子を見て、芹沢あかりの真の相手が蒼井翔太ではなく三浦葵であることを見抜いていた。そうであるだけに、直後に来た「俺も後悔したくない」の場面は、軽い「ホラー」にしかなっていなかった。否、まさか、これは実は視聴者を怖がらせるために作られた納涼テレヴィドラマだったのだろうか。
病院内で夏祭を模擬して花火大会を拵えた場面に至っては、もはや物語の説得力なんか放棄されているに相違ないとしか思えなかった。
蒼井翔太を指導する立場にある医師は、鳴滝(奥田達士)。病院内で繰り広げられる奇妙な事態がディケイドの所為ではないことを一刻も早く認識して欲しい。建設現場の棟梁は鴻上光生(宇梶剛士)。ゆえに今回はフォーゼとオーズとディケイドの共演だったと云うも過言ではない。