福士蒼汰ドラマ恋仲第八話

福士蒼汰主演テレヴィドラマ。月九「恋仲」。第八話。
仮面ライダーフォーゼの如月弦太郎も立派な大人になってきているようだ…という間違った視点からこのテレヴィ番組を見ている視聴者(吾人の如き)には、主人公の三浦葵福士蒼汰)だけは充分まともな奴であるように見えなくもないが、もっと冷静に視聴している人々の眼には、彼も大いに変な奴であると見えるらしい。先程、女友氏からのメールに「主人公のアオイ」に対する不満が述べられてあるのを読んで、そのことに気付かされた。
しかし思うに、二十歳代前半の普通の社会人男子というのは多分、あの程度ではないのだろうか。今ここに普通と書いたのは文字通りの意味においてであって、天才でもなければ奔放でもないというのは普通だろうと思われる。換言すれば、少年時代から憧れてきた職業に就きたいと考えて、早熟の天才でもないのに難しい道に突き進んでしまえる程には大胆だが、早くに結婚を決意できる程には大胆ではないというのは、そんなに変な話でもなかろうと思われる。
そもそも三浦葵よりもむしろ周囲の連中があまりにも変で、それに比べるなら三浦葵は充分まともな奴にしか見えないとも云える。
例えば、金沢公平(太賀)は、今週の様子だけ見れば変ではなかったかのように錯覚させるが、今までの言動と突き合わせるなら、相変わらず無茶苦茶だったと判る。芹沢あかり(本田翼)が蒼井翔太野村周平)から結婚の申出を聞かされるはずの富山の花火大会へ向けて出立したらしい…という事実を三浦葵から聞かされたとき、金沢公平は三浦七海(大原櫻子)と一緒に驚き、いかにもショックを隠せない様子でさえあったが、これは理不尽ではないか。三浦七海が驚くのは当然だが、金沢公平には驚く資格がない。なぜなら彼こそは蒼井翔太の悪事の数々を知ってもなお蒼井翔太への理解者を気取り、その恋を支援し続け、そのために芹沢あかりの説得にまで尽力し、ゆえに結果としては三浦葵の恋を邪魔し続けていた張本人であるから。だが、蒼井翔太の恋を支援することはそのまま三浦葵と芹沢あかりの恋を妨害することにしかならないことに彼が気付かなかったとは信じ難い。急展開の発端を作ってきた張本人が、急展開に接して驚くというのはとんでもなく無茶苦茶な話であると云わざるを得ない。
芹沢あかりの同居人も尋常ではない。芹沢あかりが三浦葵に宛てた手紙を蒼井翔太が盗んで隠していた事実について、この同居人は、蒼井翔太の真剣な情熱がそこに表れていると述べて肯定し始めたのだ。真剣な愛の情熱の表出であるなら迷惑行為でも暴行でも許されるとでも云うのか。(しかし思い起こせば二〇一〇年六月二十四日放送のテレヴィドラマ「素直になれなくて」最終話でも、「本気」の愛欲に基づいているならパワハラのセクハラで人一人を死に追いやろうとも肯定されるという恐ろしい思考が表されていたから、これはフジテレビ内部では常識と化しているのかもしれない。これが世間では常識として通用しないということを早く学んで欲しい。)
そもそも芹沢あかりが三浦葵ではなく蒼井翔太と付き合い始めたのは三浦葵と再会できなかったからであること、しかるに再会できなかったのは三浦葵への手紙が蒼井翔太によって盗まれて隠されたからであること、従って芹沢あかりを長らく傍で見守ってきた相手が三浦葵ではなく蒼井翔太であるのは三浦葵が薄情だったからでもなければ蒼井翔太が真剣だったからでもなく、あくまでも蒼井翔太三浦葵を阻んだからでしかないこと、しかもそのための手段が卑劣な窃盗だったことは既に明白であるのに、この同居人はどうして蒼井翔太を肯定できるのか。
序にもう一人。三浦葵が出場して審査員特別賞を受賞した新人建築家コンクールの、あの審査委員長の島野仁(矢島健一)。彼の高く評価した新人建築家としての三浦葵に関して、彼が述べたことは何一つ間違ってはいなかったし、建築コンクールの講評の場で受賞者の私生活に関する心配をしてしまうのも劇中の急展開の契機としては面白いとは思うが、問題は、彼がどうしてあんなにも正確に三浦葵の事情を読み抜き得たのかという一点にある。唯一考え得るのは、出場者によるプレゼンテイションの終了後、三浦葵が携帯電話で恋人と思しい相手と会話したあと客席から出て来た友人等に語っていたことを、彼が全て聞いてしまっていたという可能性だが、残念ながら、今宵放送されたものを録画しておいたのを見直してみた限り、そのことを裏付け得る描写は見当たらなかった。このテレヴィドラマ制作者は「伏線」という語を知らないのかもしれない。
なお、福士蒼汰と本田翼と野村周平の三名が変な料理店「ビストロスマップ」を訪ねたところも見た。福士蒼汰は気の利いたことの一つも云えない人かと思っていたが、今回は気の利いたことを連発していて意外に面白かった。木村拓哉ジャニー喜多川の物真似をしたとき、福士蒼汰だけが反応していたが、多分、彼は今までに中島健人大西流星、中島裕翔、田口淳之介等と共演してきて、ジャニー喜多川の話もそれなりに聞かされてきたのだろうか?と想像される。