旅行記一/高松三越ダチョウ展/香川県立ミュージアム常設展示

休日。朝七時前に朝食を終えて、旅行の準備を整え、八時四十五分頃に家を出て道後温泉駅へ行き、市内電車で出立したが、大街道で急に電車が停まった。停電で、復旧の見通しが立たない由。仕方ないのでタクシーで松山市駅へ行き、九時五十分、高松行の高速バスで出立。
高速バスは松山市駅からJR松山駅を経て大街道にも寄るので市内電車の線路の大半の脇を通ることになるが、なるほど、線路のあらゆる場所に電車が停車していた。勝山町駅では普通の電車が停車している直ぐ後ろに、今や観光の目玉とも云える「坊っちゃん列車」までも停車していた。道後へ向かう途中で降車させられて観光客も驚いたに相違ないが、運転手も車掌も辛かったろう。選りにも選って土曜日に、何故こんな事態が生じたのだろうか。
高速バスで移動中、前半には完全に寝ていたが、十一時半頃に起きてしまったので、家から持参してきたパン二個で早めの昼食。十二時四十分頃にJR高松駅へ到着。タクシーで繁華街にあるホテルへ行き、大きな荷物だけ預けて直ぐに出立。ホテルは屋根付の商店街に通じているので、そこを歩いて三越へ。ここの五階のイヴェント会場で開催されている福井江太郎絵本『駝鳥』刊行記念展を鑑賞。筒井康隆の文と福井江太郎の絵による新刊の絵本『駝鳥』の原画のほか、近年の駝鳥の絵、菖蒲や牡丹、百合の絵、そして龍の絵が多数並んでいたが、何といっても目を惹いたのは最初の画集『クロトリノハオト』にも掲載されていた初期の極めて抽象性の高い駝鳥の絵二点と、ニューヨークの個展のための制作されたさらに抽象性の高い駝鳥の絵二点。しかも非売品ではないというのが凄い。会場内にはライヴペインティングの作品が一点。九日に制作されたらしい。そして本日、画家御本人が登場し、会期の最終日にあたる明日の午後二時、会場内でライヴペインティングが行われる由。
午後三時頃に高松三越を出て、高松城方面へ歩き、香川県立ミュージアムへ。現在ここではスタジオジブリ展が開かれているが、無論それには一瞥することもなく、常設展示だけを観照。修復を完了した館蔵の西洋絵画の御披露目のほか、衆鱗図をはじめとする高松松平家歴史資料常設展示、テーマ展「語り継ぐ戦争の記憶」、アート・コレクション「県展のあゆみ-文化会館に始まる20年」を見ることができた。
高松松平家歴史資料常設展示室の過半を用いて開催されていたテーマ展「語り継ぐ戦争の記憶」では、七十年前に敗戦で終わった日本の戦争それ自体に対する現代の視点からの価値判断の類をなるべく抑制して、あくまでも当時の貴重な資料そのものを多数展示することに徹しようとしているのが良かった。多分、展示されている歴史資料の数々を寄贈なさった方々の思いを、大切にしようとした結果だろう。例えば、特攻隊の飛行服が極めて良好な保存状態で展示されていたが、これを寄贈なさったのは、特攻の訓練に励みながらも出撃しないまま敗戦の日を迎え、以後は毎年夏八月十五日に一日だけ飛行服を着用しながら、とても大切に保存してきたという方である由。そうした方々の思いを大切にすることこそ「記憶」を「語り継ぐ」ことの第一歩であるに違いない。
この展示に見入ってしまい、気付けば既に閉館時間の直前になっていて、弘法大師に関する常設展示を見るための時間がなくなり、三階の展示室へ行くことも断念せざるを得なかった。それにしても、実に見応えある展示が行われているにもかかわらず、かなり賑わっているはずの館内で、常設展示室には客が殆どいなかった。やはりジブリ展の客は歴史にも文化にも関心がないのだろうか。これこそは占領軍による「改革」の一番の成果であると云えるかもしれない。ちなみに先月の広島県立美術館では藤子・F・不二雄展だけではなく美術工芸の展示も賑わっていたから、この差は、漫画やアニメの中にも文化芸術に近しいものと近しくないものの差があるということを物語るのだろう。
一階のミュージアムショップで図録数冊を急ぎ購入して閉館時間に館を出て、徒歩で商店街を通り抜け、六時二十分頃、ホテルへ入り、少し落ち着いたあと再び外出。ホテルの一階にある文房具店で「うどん県それだけじゃない香川県」のクリアファイルと、ウドン型の磁石を購入。活気ある商店街を歩き、宮脇書店の新館と本館を見物。流石、明屋書店アエル店とは違って、ここは使える書店だった。漫画売場には藤子・F・不二雄大全集もそれなりに置いてあった。結局、ホテルの二階にある料理店で健康に良さそうな夕食。明日の朝食もここで摂る予定。ホテル一階のコンヴィニエンス店で飲物を買って宿泊室へ戻った。
パソコンを開いてニュースを読もうとしたところで少女漫画の宣伝が目に留まり、無料で公開されているというので第一巻を読み始めれば意外に面白く、続けて第二巻を読んでみたら止められなくなってしまい、大三巻を読み終えたあとは有料の領域に入ることが表示されたが、今さら止めるわけにもゆかないと思い、購入して読み続けて、一気に全十二巻を読んでしまった。インターネットの恐ろしさを痛感した。不図テレヴィを見れば、またしてもNHK「生命大躍進」の再放送。