仮面ライダードライブ第四十六話

平成仮面ライダー第十六作「仮面ライダードライブ」。
第四十六話「彼らはなぜ戦わなければならなかったのか」。
チェイス上遠野太洸)は詩島霧子(内田理央)のため、その弟の詩島剛(稲葉友)を守るために亡くなったが、遺品とともに遺志を継いだ詩島剛は、受け止めたシグナルチェイサーを用いて新たな仮面ライダー、チェイサーマッハに変身した。元人間のゴルドドライブ=蛮野天十郎森田成一)が「あり得ない」と狼狽していたことは、この新たな変身が人間の認識能力を超越した奇跡であり神秘であることを物語る。
チェイサーマッハの攻撃によってゴルドドライブは破砕したが、なおもゴルドドライバーの偽ベルトに内蔵された蛮野天十郎の「データ」だけは生き延びようとしていた。だが、身体を失い、寄生先をなくして一体何をなし得るというのだろうか。この時点で既に蛮野天十郎の強気な言は滑稽でしかない。確かに彼の遺した超進化ロイミュード四体分の力を有する新たな機械生命体「シグマ」がそのとき始動してはいたが、それはもはやデータでしかない蛮野天十郎の制御下にはなかったろう。
もはや無様な存在でしかない蛮野天十郎に対して、詩島剛が下した最後の鉄槌は、今回の話で最も重要な場面だったろう。
しかもチェイスの武器である信号アックスの一寸コミカルな機能が、まさか、ここにおいて真の威力を発揮した。信号アックスはその名の通り、初めに赤信号を灯して使用を制限し、攻撃力を充満させた時点で漸く青信号を灯し、「イッテイイヨ」と宣告して使用者を駆り立たせる。力を貯めるまでに時間を要するのは仕方ないにしても、それを信号で表示するばかりか、「イッテイイヨ」という甲高い音声で発するのは、流石に開発した沢神りんな(吉井怜)特有の遊び心に起因する余計な機能ではないのかとも思われたが、どうやらそうではなかったらしい。なぜならこの最も重要な戦闘において、あの音声は厳粛な審判の声であるかのように響いたから。
今まで散々愚弄してきた詩島剛に、今や必死で命乞いをするしかなかった蛮野天十郎。だが、詩島剛がそれを聞いていたのは、延命を選択肢として考慮したからではなく、あくまでも信号アックスの攻撃力が満ちてくるのを待っていたからでしかない。そして「イッテイイヨ」の音声が詩島剛を促した。
主をなくし、目的を失ってもなお、動き始めたら勝手に動き続けるしかないのは機械の定め。新たな機械生命体「シグマ」は何の目的もなく、蛮野天十郎の計画を実行し始めた。ドライブ=泊進ノ介(竹内涼真)はハート(蕨野友也)と一緒に戦っていたが、隙を突かれて攻撃され、瀕死の状態にあったとき、「どんより」を免れる能力を失ってハートと一緒には戦えないでいたメディック(馬場ふみか)が、ハートを助けるため、最後の力で泊進ノ介を治癒し、儚く散った。